2012 Fiscal Year Research-status Report
1950-1960年代のソ連における国家と社会の「協働」 その理念と実態
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24520837
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkai-Gakuen University |
Principal Investigator |
松戸 清裕 北海学園大学, 法学部, 教授 (10295884)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ソ連 |
Research Abstract |
研究活動:平成24年9月に約3週間モスクワへ出張し、本研究課題全体に関する史料・資料を収集した。具体的には、ロシア連邦国立文書館においてロシア共和国最高会議幹部会フォンドの史料を集中的に読んでノートを取った一方で、ロシア国立図書館において本研究課題の関連文献に幅広く目を通し、ノートを取った。 こうして収集した史料・資料を精読して当時の政策や社会状況に関する考察を進めると同時に、今年度の研究課題として設定した、犯罪との闘いにおける国家と社会の「協働」の方策として重視された「社会による犯罪者の身柄引き受け」の理念と実態について実証的に描く論文に取り組んだ。 研究実績:上記の出張の際にロシア連邦国立文書館で読んだロシア共和国最高会議幹部会フォンドの史料も活用して、「一九五〇~六〇年代のソ連 ある自警団員殺害犯の特赦申請をめぐる議論からみえてくるもの」(中嶋毅編『新史料で読むロシア史』山川出版社、2013年3月、242~259頁)を執筆した。この論文では、「身柄引き受け」は扱わなかったものの、犯罪(者)への対処に注目して国家と社会の「協働」の実情を描くことができたと考えている。 本研究課題の当初の計画では予定していなかったこの原稿の執筆にモスクワ出張前後の数か月を費やすことになったため、今年度の研究課題として設定した「社会による犯罪者の身柄引き受け」の理念と実態を実証的に描く論文については、年度内に発表することはできなかった。しかし、草稿は書き上げており、次年度前半には完成稿を仕上げて学会誌に投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記のように、今年度の研究課題として設定した「社会による犯罪者の身柄引き受け」の理念と実態を実証的に描く論文を年度内に発表することができなかった以上、この点では今年度の研究課題を達成することはできなかったと認めざるを得ない。 しかし、研究がまったく進んでいないわけではもちろんなく、本研究課題の当初の計画では予定していなかった上記の論考「一九五〇~六〇年代のソ連 ある自警団員殺害犯の特赦申請をめぐる議論からみえてくるもの」においても犯罪(者)への対処に注目して国家と社会の「協働」の実情を描いており、また、「社会による犯罪者の身柄引き受け」に関する論文ついても次年度前半には学会誌に投稿する見通しの立つ段階まで研究を進めている。 このため、評価区分としては「やや遅れている」だが、研究進捗状況の遅れはわずかであり、次年度には必ず挽回できると確信している。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、研究計画では今年度中に発表する予定であった、犯罪との闘いにおける「社会による犯罪者の身柄引き受け」についての論文の完成を急ぎ、学会誌に投稿する。 平成25年9月および平成26年2~3月にはモスクワへ出張し、文書館と図書館において本研究課題全体に関わる史料調査をおこなう。 平成25年度は、研究分担者となっている基盤研究(B)「近現代ロシアにおける公衆/公論概念の系譜と市民の「主体性(agency)」」の最終年度であり、秋から年度末にかけて、合衆国で活動し世界的に注目されているロシア人研究者も招いたカンファレンスの開催や論文集の取りまとめなどが予定されているため、この研究課題によるロシアにおける公衆や公共圏について19世紀後半からソ連末期まで通時的に検討した成果を活用しつつ、本研究課題の中心テーマである国家と社会の「協働」についての考察を深める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の研究計画においては、研究期間(平成24~27年度)の年度ごとに設定した課題について、各2週間程度のモスクワでの資料調査を毎年度2回ずつおこなうことを予定していた。 しかし、平成24年度の資料調査をおこなう過程で、年度ごとに設定した課題に限定して史料を読むよりも本研究課題全般について史料を読むほうが全体像を常に意識できると実感したこと、文書館での史料調査は1回の調査期間が長いほうが効率的なことから、すべての課題を意識した資料調査を研究期間の前半に多めにおこなうほうが望ましいと判断した。 このため、平成25年度には9月と2~3月にそれぞれ約4週間のモスクワ出張をおこなうことを予定しており、そのための旅費支出が研究費使用計画の中心となる。 また、主に使用しているパソコンのOSがウィンドウズXPで平成26年4月にサポート期間が終了すること、パソコン自体購入からすでに10年近くが経つことから、今年度の研究計画遂行に支障のないタイミングでパソコンを購入することも検討している。
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Research Products
(1 results)