2015 Fiscal Year Research-status Report
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24520840
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松嶌 明男 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (20306210)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | フランス近代史 / フランス宗教史 / フランス革命史 / ナポレオン体制史 / 礼拝実践 / カトリック教会 / 一般向け / 概説書 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は研究全体の中で、積み残されてきた最大の課題である、研究成果を一般向けに分かりやすく公表することを最優先した。それを実現する手段として、河出書房新社から『図説ナポレオン』を刊行することとし、その原稿の作成と掲載する図版の調査及び選定に多くの時間と労力を費やした。この書物は、内容的にナポレオン本人とナポレオン体制に関する通史的な概説書であるため、残念ながら教会からの聖具類の没収を中心とする本研究計画の成果をダイレクトに反映するものではないが、この研究計画のエッセンスは十二分に生かされた内容となっている。特に、通常はナポレオン体制史の概説書で軽く扱われがちな宗教及び礼拝に関する記述に一章を割いて充実させ、聖具類を多用するフランスにおけるカトリックの礼拝実践について分かりやすく説明することができた。幸い、専門家からも一般読者からも、好評をもって受け入れられ、売れ行きも好調であると聞いている。同時に、成果の発表の一環として、書評と文書館紹介を学会誌に執筆し、掲載された。 負荷の大きかった『図説ナポレオン』の仕事を初秋に終え、続いて春に向けて本研究計画の本体を再始動しようとした矢先に、フランス・パリで連続銃撃テロ事件が生じ、本研究計画の遂行を大きく妨げる結果となったのは無念である。特に、テロの現場となったパリ市内の9区から11区にかけてのエリアは、パリでも大学関係の知的な人々が多く住む場所で、定宿を含む滞在時の拠点がある場所であった。直接的には公文書館の閉鎖などは無かったものの、事態の推移を見守る必要があり、特に2016年3月の現地調査の実施は見送らざるをえなくなった。その後、ベルギー・ブリュッセルでパリと同一のテロ集団による爆破で多数の死傷者が出る事態となり、長期的に比較対象として実施を検討していたブリュッセルでの実地調査はほぼ不可能となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究計画は、計画立案時には全く予期できなかった重大事態が連続して生じているため、予定と比べると遅延を余儀なくされていることについては、忸怩たる思いでいる。特に四年目の本年度は、河出書房新社の担当編集者に刊行を延期してもらっていた『図説ナポレオン』の原稿を完成させ、無事に刊行にこぎつけた。喜んだのもつかの間、パリで過激派によるテロが勃発し、しかもそれが定宿を含むパリの調査滞在中の拠点エリアで起きたため、本年度から実施する予定の実地調査は見送らざるをえない状態になった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画も残すところあと一年となったため、研究成果の発表を優先して実施する予定である。本年度中と来年度以降の論文集に掲載される論文をそれぞれ執筆予定であり、それに本研究計画の成果を反映させる予定である。また、それらの執筆のための準備として、すでに収集した一次史料の分析を進め、必要な情報を得るように努める。また、フランスでの実地調査についても、状況の推移を注意深く見守りながら、予定では9月中旬に実施するつもりで計画を練っている。具体的には、パリとナントで調査を行い、史料を収集する予定である。ただし、フランスからベルギーにかけての地域の治安状況によっては、渡航を中止せざるをえない場合も想定される。さらに、フランスのオランド政権は社会党でありながら労働者の利害に反する福祉切り捨て政策を打ち出しており、すでにフランスでは各地で大規模なデモが行われる事態になっている。フランスの場合、テロだけでなく、この労使対立も不安定要因として考慮に入れなければならず、落ち着いて研究できる環境の回復は当分先と思われる。
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Causes of Carryover |
2015年度は2016年3月にフランスに渡航して実地調査を行う予定であった。ところが、パリ市内で連続銃撃テロが生じ、しかもそれがパリ滞在時の拠点エリアで起きたため、渡航を中止するとともに事態の推移を見守ることにした。結果的に、フランスへの渡航のために確保してあった予算が使われないままに翌年度に繰り越された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は研究費を確実に執行するため、9月にフランス渡航による実地調査を行うこととし、日程を確保するとともに国際便の航空券を予約した。また、昨年度分の予算が繰り越されているため、可能であれば3月に再び海外渡航を行える日程を組み、研究費の間違いのない執行が果たせる体制をとっている。
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Research Products
(5 results)