2013 Fiscal Year Research-status Report
米国アリゾナ州における日系人強制収容所に関する歴史資料に基づく実態調査
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24520847
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
和泉 真澄 同志社大学, グローバル地域文化学部, 教授 (00329955)
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Keywords | 日系アメリカ人 / 強制移動・収容 / 国際情報交換 アメリカ合衆国 |
Research Abstract |
本年度は基盤研究Cの二年目であり、さらなる資料収集や現地調査を行うとともに、調査研究の内容を整理・発表することを心がけた。また北米日系人強制収容に関して、アリゾナ以外の収容体験へと視野を広げ、特にトゥーリレイク収容所での体験を綴った日記を偶然手にすることになったため、手書きの日記の文字起こしの作業に取り掛かった。 5月30日および6月20日に地元のカナダ移民研究者の協力を得て、滋賀県の湖東移民村でカナダ元在住者に聞き取り調査を行った。8月1日、2日に広島で日系人強制収容に関する英語朗読劇『Breaking the Silence』を鑑賞し、広島県立美術館で『尊厳の芸術』展を鑑賞した。8月13日から15日にアリゾナ州ツーソンおよびフィニックスでヒラリバー収容所の農業に関する資料収集および聞き取り調査を行った。1月29日から31日までは琉球大学で移民関連資料の調査をした。 6月30日には日本移民学会で「日系アメリカ人強制収容所における農業-アリゾナ州ヒラリバー戦時店住所の事例より」と題して口頭発表を行った。7月4日から7日には全米日系人博物館主催の会議 “Speaking Up! Democracy, Justice, Dignity”でカナダにおける日系人戦時収容体験について解説した。10月5日にマイグレーション研究会で「メディアとしての卒業アルバム-日系アメリカ人戦時転住所における高校生活の表象分析より」と題した口頭発表を行った。 出版物としては、「『ゴードン・ヒラバヤシ』キャンプ場について―カタリナ連邦刑務所と日系アメリカ人徴兵忌避者たち―」『同志社法学』第360号(64巻7号) 、(2013年3月):II-617-640.および「鉄条網なき強制収容所―第二次世界大戦下の日系カナダ人」『立命館言語文化研究』25巻1号(2013年10月): 119-135.を単独執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一次資料の収集においては、ヒラリバー戦時転住所の元被収容者の聞き取りを行い、特にヒラリバーの農業関連事項について詳細な情報を得ることができた。また、ヒラリバーおよびその他の転住所の学校に関する新聞や卒業アルバムの資料を複写することができた。カタリナ連邦刑務所での日系二世の生活に関する論考を出版し、またヒラリバー収容所の農業について、日本移民学会で研究発表を行った。さらには、7月にシアトルで行われた全米日系人博物館主催の日系人強制収容に対する戦後補償(リドレス)25周年記念の会議において、トゥーリレイク隔離収容所の元被収容者の家族から、隔離収容所内の拘置所で執筆された日記の存在を知らされ、手書きの日系のワープロ起こしの作業をリサーチアシスタントの協力を得て始めた。ヒラリバーだけではなく、他の転住所に関する大変貴重な記録であるため、日系アメリカ人強制収容に関する今後の研究の発展につながる重要な資料であると認識している。以上の進捗状況より、現在まで研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年度は当該基盤研究Cの最終年度となるため、これまでに収集した文書資料および映像資料などの分析を進め、ヒラリバー収容所の農業や被収容者の生活実態についてまとめる作業に入りたい。今後収集したい資料としては、ワシントンDCのWRA関連資料などに含まれると思われる収容所の詳しい地図や農地・建築物・機材等に関する資料である。またヒラリバー収容所の元被収容者のさらなる聞き取りができればと考えている。さらに、2014年度には研究成果の発表を随時行いたい。『移民研究年報』にヒラリバーの農業生産活動に関する論考を投稿予定であるが、その他にも研究会発表などを行いたいと考えている。研究の最終年度であるが、当初計画していた研究について網羅できたわけではないので、来年度以降のさらなる研究の進展に繋げるため、当該基盤研究Cで達成できた部分と、できなかった部分を整理し、今後の研究の方向性について明確にしていきたい。特に、課題のなかであまり触れることができなかったのが、日系人以外のエスニックグループとの関連性や収容所における農業と戦前のカリフォルニアで日系人が行っていた農業との関連性である。今回の調査で、収容所において一世たちが精力的に行った種苗開発が、戦前の日系人の持っていた高い農業技術と深いつながりを持っていたことが新たにわかった。この点などは、今後研究を展開する一つの方向性を示していると思われる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年度には、資料収集のための海外出張として、8月にアリゾナ州ツーソンおよびフェニックスを訪れたが、ツーソン訪問は本務校の海外語学研修の視察も兼ねたため、往復の航空券代は本務校の費用でまかなわれ、科研の用務の日にち費用のみを科研の基盤研究Cより支出した。このため、当初予定していた費用よりは、出張費用が少額で済んだ。 2014年度には、ヒラリバー収容所関連資料の収集のためにアリゾナ州ツーソン、フェニックス、およびワシントンDC、また元被収容者の聞き取りのためにニューヨーク、その他の都市を訪れる予定をしている。その他の旅費としては、国内および海外の学会への参加費用が考えられる。また、トゥーリレイク収容所の手書きの獄中記のワープロ起こしに引き続きリサーチアシスタントを利用する予定である。その他、必要な機器(研究室用プリンター)、図書、参考書、文具などの消耗品などに使用予定である。
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[Presentation] 日系カナダ人強制収容―アメリカとの比較―
Author(s)
和泉真澄
Organizer
Conference “Speaking Up! Democracy, Justice, Dignity,” Japanese American National Museum)
Place of Presentation
Sheraton Seattle, Seattle, WA, USA
Invited
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