2014 Fiscal Year Annual Research Report
近世フランスからみた境界域としての英仏海峡ー仏英関係史の構築をめざして
Project/Area Number |
24520850
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
阿河 雄二郎 関西学院大学, 文学部, 教授 (80030188)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 英仏海峡 / 奴隷貿易の利益率 / 奴隷船の構造 / 海賊と私掠 / 境界域 / マールテロゥ塔 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近世フランスを「海洋世界史」の観点から捉え直し、とくに「第二次英仏百年戦争」と形容される17-18世紀のフランスとイギリスとの関係を多面的に考察することを目的としている。最終年度のテーマは、大きくいって3つあった。 第一は、英仏海峡を挟んで、おもに通商・交易の面でイギリスとフランスがどのように対峙していたかである。この点では、パリの国立図書館などで研究書や史料の調査をおこなったほか、海事史、密貿易や私掠に関する図書の入手に努めた。その成果の一部として、「私掠船(コルセール)の唄」『シャンソン・フランセーズ』6、「沼地のなかの城塞都市ブルアージュ」『関学西洋史論集』38を発表した。 第二に、この研究を進めていく過程で、研究代表者はフランスの奴隷貿易に関心をもつようになった。近世ヨーロッパの対外発展は奴隷貿易をベースにしているが、この分野の研究が意外に少ないからである。ここではイギリスとの比較を念頭に考察を進め、日本西洋史学会大会(於立教大学)での報告「ナポレオン時代の奴隷貿易」と、論文「奴隷船が出港するまで」森田雅也編『島国文化と異文化遭遇』(2015年3月)にまとめた。 第三に、フランスとイギリスは英仏海峡だけでなく、地中海方面でも覇権を争っていたので、今年度の調査ではコルシカ島に赴き、アジャクシオ、ボニファシオなどの港湾施設を中心に見学した。その結果、パオリの独立運動の経緯など「フランス革命=ナポレオン戦争」期の英仏対立の状況がよく理解できた。英仏海峡のイギリス側に建設された小さな砲台群(Martello Tower)も、コルシカ島の沿岸部に敷設された砲台を模倣したものだった。 研究代表者はすでに「近世の英仏海峡」『関西学院史学』40(2013年)で両国の関係を予備的に検討したが、上述した研究成果をふまえて、トータルな「仏英関係史」の構築に努めたい。
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