2013 Fiscal Year Research-status Report
韓国出土ヒスイ勾玉の集成と流通過程に関する考古学的研究
Project/Area Number |
24520854
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
高橋 浩二 富山大学, 人文学部, 准教授 (10322108)
|
Keywords | 考古学 / ヒスイ勾玉 / 翡翠 / 韓半島 / 集成 / 古墳時代 / 流通 |
Research Abstract |
本研究は、韓国出土のヒスイ勾玉を集成し、日本の弥生時代から古墳時代のものと比較するとともに、分布や出土点数の変化などの検討を通して、日本列島から韓半島へのヒスイ勾玉の流通過程を明らかにしようとするものである。 平成25年度は、まず国内および韓国の研究機関、大学等が所蔵する発掘調査報告書を活用させていただき、皇南大塚や金冠塚、天馬塚などの新羅王陵をはじめとしてヒスイ勾玉が集中して出土している慶州における集成をすすめた。合わせて、大邱や梁山など慶州周辺地域における集成を行った。その結果、冠や頸胸飾、耳飾、釧、腰佩への着装が認められ、一つの古墳から出土する点数も数十点に及ぶ場合がある新羅王陵に対して、小規模な古墳では頸胸飾または耳飾として1点から数点程度の着装が主体であること、また周辺地域では有力勢力の古墳であってもヒスイ勾玉の出土点数は少なく、冠や腰佩などへのヒスイ勾玉の着装が欠落するあり方が見られることが確認された。 資料の巡検に関しては、韓国出土のヒスイ勾玉のほか、新石器時代から三国時代にかけての軟玉や水晶、ガラス製の玉類などについて実施した。また、日本における古墳出土のヒスイ勾玉に加えて、流通過程や交流関係を考える上で重要な渡来系遺物に対して巡検を行った。このほか、関連する研究集会に参加して、韓半島諸地域との交流関係や流通過程に関する研究動向について新たな知見を得るとともに、研究協力者等の協力を得ながら文献探索などの情報収集や研究者との意見交換を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究では、韓国出土のヒスイ勾玉の集成的研究がすべての基礎となるため、平成25年度もこれを優先して行った。新羅王陵をはじめとして慶州における集成に関しては、ヒスイ勾玉出土古墳の基数が多く、また出土点数も膨大である上に、調査報告書に実測図が未掲載で、記述も不十分な場合が少なからずあり、内容の確認に時間を要した。慶州周辺地域に関しては、他に慶山地域の林堂洞古墳群や造永洞古墳群においても複数の古墳からヒスイ勾玉が出土しているが、計画通り順調に集成をすすめることができなかった。資料の実見に関しても十分にすすめることができなかった。また、当初の計画では伽耶・百済などにおけるヒスイ勾玉の集成や実見についてもすすめるはずであったが、順調に進展しているとは言えない。 韓半島におけるヒスイ勾玉の出土点数や分布の変化を明らかにし、さらにこのことを踏まえて日本列島から韓半島へのヒスイ勾玉の流通過程を検討する上で、5世紀以後に出土点数が急激に増加する慶州に加えて、慶州周辺地域における内容を把握することが不可欠であり、さらに伽耶・百済などの地域における出土点数や分布との比較が重要であると位置付けられるため、現在までの達成度について遅れていると評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在までの達成度にも記したように、本研究は韓国出土のヒスイ勾玉の集成的研究を基礎とするものであり、ヒスイ勾玉が多数出土している慶州と慶州周辺地域との比較や、さらに伽耶・百済などの地域との比較も重要であると位置付けられるため、平成26年度は主として慶州周辺の慶山地域、伽耶・百済などの地域におけるヒスイ勾玉の集成を重点的に行う。集成にあたっては、新羅・加耶古墳出土硬玉製勾玉の一覧表が新たに公表されており(朴天秀・林東美2013「新羅・加耶の玉-硬玉製曲玉を中心にして-」『韓国先史・古代の玉文化研究』福泉博物館)、これを参考にして集成作業をすすめる。また、研究協力者等の協力を得ながら、可能な限り実測と写真撮影による資料化をすすめる。実見の調整が整わない場合でも資料の巡検は行う。また、合わせて韓国における研究の現状に関する情報収集や文献探索などを実施する。国内の資料調査に関しては、各地における古墳出土のヒスイ勾玉や他の玉類、渡来系遺物のほか、ヒスイ原産地の糸魚川地域における勾玉製作遺跡の資料などに関する巡検等を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画ではヒスイ勾玉の集成および資料化が順調に進展し、一定の地域における成果がまとまれば、資料収集整理に対する補助や専門的知識の提供を得ながら、印刷費を使って集成的研究の成果を分冊して発行することを考えていたが、集成的研究の成果がさらにまとまった段階で発行することに変更した。 次年度は、主として慶州周辺の慶山地域や伽耶・百済などの地域におけるヒスイ勾玉の集成を重点的に行う計画であることに加えて、新羅王陵などに関する特別展が予定されており、主に旅費として充当することを考えている。
|