2014 Fiscal Year Research-status Report
韓国出土ヒスイ勾玉の集成と流通過程に関する考古学的研究
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24520854
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
高橋 浩二 富山大学, 人文学部, 准教授 (10322108)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 考古学 / ヒスイ勾玉 / 翡翠 / 韓半島 / 集成 / 古墳時代 / 流通 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、韓国出土のヒスイ勾玉を集成し、日本の弥生時代から古墳時代のものと比較するとともに、分布や出土点数の変化などの検討を通して、日本列島から韓半島へのヒスイ勾玉の流通過程を明らかにしようとするものである。 平成26年度は、まず国内および韓国の研究機関、大学等が所蔵する発掘調査報告書を活用させていただき、慶山地域の林堂洞古墳群や造永洞古墳群、そして大邱地域や昌寧地域などの慶州周辺における資料の集成と、慶州における資料集成の補足を実施した。また、加耶においては高霊地域の池山洞古墳群や陝川地域の玉田古墳群、咸安地域の道項里古墳群をはじめとした資料の集成を行った。その結果、冠や頸胸飾、耳飾、釧、腰佩への着装が認められ、一つの古墳から出土する点数も数十点に及ぶ場合がある新羅王陵に対して、小規模な古墳では頸胸飾または耳飾として1点から数点程度の着装が主体であること、また慶州周辺や加耶では有力勢力の古墳であってもヒスイ勾玉の出土点数は少なく、冠や腰佩などへのヒスイ勾玉の着装が欠落するあり方が前年度同様に確かめられた。同時に、そのような中にあって、ヒスイ勾玉が多数出土している玉田古墳群の重要性を再認識することができた。このほか、百済や栄山江流域における古墳出土資料の集成を行った。 資料の巡検等に関しては、韓国出土のヒスイ勾玉のほか、他の玉類や装身具について実施した。加えて、韓国人研究協力者との研究打合せ等を通じて、韓国における古墳編年や年代観に関する知見を得たほか、文献収集を実施した。また、日本における古墳出土のヒスイ勾玉に加えて、流通過程や通交関係を考える上で重要な渡来系遺物に対して巡検を行った。このほか、関連する調査報告会に参加するなどして、ヒスイ勾玉や玉類に関する研究動向について新たな知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究では、韓国出土のヒスイ勾玉の集成的研究がすべての基礎となるため、平成26年度も引き続きこれを優先して行った。林堂洞古墳群や造永洞古墳群、池山洞古墳群、玉田古墳群、道項里古墳群に関しては、ヒスイ勾玉出土古墳の数が多く、出土点数も膨大であり、集成に時間を要した。また、慶州周辺や加耶における古墳の中には、調査報告書の記述が不十分な場合が少なからずあり、内容の確認に時間を要してしまった。 集成にあたって参考にした新羅・加耶古墳出土硬玉製勾玉一覧表(朴天秀・林東美2013「新羅・加耶の玉-硬玉製曲玉を中心にして-」『韓国先史・古代の玉文化研究』福泉博物館)のうち、未報告を除く資料はほぼ集成を終えた。しかし、百済や栄山江流域における古墳出土資料については計画通り順調に集成作業をすすめることができなかった。資料の実見に関しても十分にすすめることができなかった。 韓国出土のヒスイ勾玉については慶州や慶州周辺地域、そして加耶に集中するが、近年では百済や栄山江流域の地でも報告例が増加している。当初の計画では、今年度で集成を終え、研究を完了する予定であったが、ヒスイ勾玉の時期ごとの出土点数や分布の変化を明らかにし、さらにこのことを踏まえて日本列島から韓半島へのヒスイ勾玉の流通過程を検討する上で、百済や栄山江流域における資料を集成し、これらの資料も合わせて比較検討を行うことが不可欠であるため、現在までの達成度について遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの達成度にも記したように、本研究は韓国出土のヒスイ勾玉の集成的研究を基礎とするものであり、したがってヒスイ勾玉が多数出土している慶州、そして慶州周辺地域や加耶だけでなく、全ての地域について類例を把握し、検討することが重要であると位置付けられるため、平成27年度は未完了の百済と栄山江流域におけるヒスイ勾玉の集成を重点的に行う。また、慶州と慶州周辺地域、伽耶における集成の補足、新資料の追加をすすめる。 資料調査等に関しては、研究協力者等の協力を得ながら、可能な限り実測と写真撮影による資料化をすすめる。実見の調整が整わない場合でも資料の巡検は行う。また、合わせて韓国における研究の現状に関する情報収集や文献探索などを実施する。国内の資料調査に関しては、各地における古墳出土のヒスイ勾玉や他の玉類、渡来系遺物などに関する巡検等を行う。 さらに、これらと並行して、ヒスイ勾玉出土古墳の分布図や一覧表等を作成し、時期ごとの出土点数や分布の変化を明らかにする。また、日本列島と韓半島におけるヒスイ勾玉の形態などの特徴のほか、出現時期や変遷などの比較検討を行う。そして最終的に、これらのことを踏まえて、日本列島から韓半島へのヒスイ勾玉の流通過程を検討し、研究をまとめる作業を行う。
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Causes of Carryover |
慶州と慶州周辺地域、また加耶においてはヒスイ勾玉の出土点数が膨大である上に、調査報告書に実測図が未掲載で、記述も不十分な場合が少なからずあり、内容の確認に時間を要した。このため、平成26年度に計画していた百済や栄山江流域などにおける集成が中途となり、加えてヒスイ勾玉の分布図などを作成し、流通過程を総合的に評価してまとめる作業が行えなかったため、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、百済や栄山江流域におけるヒスイ勾玉の集成を完了させるとともに、韓国出土ヒスイ勾玉の分布図や一覧表を作成し、流通過程を総合的に評価してまとめる作業を行うこととし、未使用額はそのための調査・資料収集旅費や謝金、物品費等の経費に充てることとしたい。
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