2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24520855
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
高浜 秀 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (60000353)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 馬具 / 銜 / 西周時代 / 春秋時代 / 遊牧民 / シベリア / 青銅器 |
Research Abstract |
国内では、奈良県の天理大学付属天理参考館、東京の東京国立博物館、早稲田大学會津八一記念館、横浜の馬の博物館、横浜ユーラシア文化館で調査を行った。中国では、内蒙古自治区呼和浩特および、陝西省華清で行われた学会に出席して発表を行うとともに、情報を収集した。また河南省、陝西省などで調査旅行を行った。河南省は、鄭州の河南博物院、洛陽博物館、三門峡市カク国博物館など、陝西省は陝西歴史博物館、宝鶏青銅器博物館などである。ロシアではモスクワ国立歴史博物館などで調査を行った。 成果として特に重要なのは、中国西周時代の銜の製作法が後の戦国時代などの銜の製法とは異なることが判明したことである。二枝式の銜は鎖状に組み合わさった2部分からなる。1部分は同一平面上にある2つの環を棒でつないだ形で、他の1部分は、異なる2平面上にある環をつないだものである。私のこれまでの理解では、前者を2枚の鋳型で鋳造した後、それを他の鋳型に組み込んで鋳造するというものであった。ところが今回調査した西周時代の茹家荘・竹園溝墓地や、西周時代後期~春秋時代前期のカク国墓地出土の銜では、一見2平面上にあるように見える部分を2枚の合せ鋳型で鋳造し、それを他の部分に何らかの方法で組み込んでいることが分かった。この製法は今まで認識されておらず、銜の発展を考える上に重要である。この製法がいつ生まれたのか、どのように戦国時代の製法に変化したのかを解明する必要がある。これはシベリアとの関連を考察するためにも、考慮しなければならない。 モスクワ国立歴史博物館ではスキタイ時代の馬具を調査したが、中国西周時代のような製法で作られた銜は見られなかった。しかし蝋型技法に類する特異な技法で作られた銜があり、これはまた研究を要するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この研究の目的は、中国の馬具、特に銜・銜留の型式学的な研究を進め、それを中央アジア・シベリアのものと比較することである。中国の銜の型式学的変化に関して、前項に記したような大きな発見があった。その後、以前調査した馬具の資料を見直したところ、他にも河南省輝県琉璃閣出土品などに関連資料を見出すことができた。この銜の変化は中国の馬具の歴史にとって極めて重要であり、これを見出したことは、研究の大きな成果といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
中国およびシベリアなどにおいて、さらにこの研究に関する調査を進めていく。今回明らかになった型式も、まだ例数が少ないので、それが西周時代を中心とする時期の主要なものであったことを確かめる必要がある。中国では特に西周時代および春秋時代の銜に関して注意を払い、この新たに知られた製法の起こりとその変化を明らかにするよう努める。またシベリアと中央アジアの銜・銜留の資料収集はまだ不足であるので、これを続行し、この種の銜が存在するかどうかも、明らかにしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
中国では、再度河南省の三門峡市カク国博物館や陝西省の宝鶏青銅器博物館において2週間程度の調査を行う。またカザフスタンのアルマトゥおよびアスタナの博物館で10日ほどの馬具の調査を行い、シベリアのバルナウルのアルタイ大学の博物館でも10日ほど馬具の調査を行う。 また国内でも、東京国立博物館、早稲田大学會津八一記念館、横浜の馬の博物館、大阪和泉市の久保惣記念美術館などにおいて、中国の馬具の調査を行う。
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