2013 Fiscal Year Research-status Report
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24520858
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
大橋 泰夫 島根大学, 法文学部, 教授 (80432615)
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Keywords | 国府 / 官衙 / 瓦 |
Research Abstract |
平成25年度は、西日本の日向国府の前身官衙(初期国庁)、讃岐国府跡、福原長者原遺跡(豊前国府関連遺跡)の現地視察を行い、各地の国府創設と整備状況の情報収集に努めた。また、北陸道の国府とその関連遺跡に関わる調査として、越前国府、越中国府、能登国府の現地において、現状における研究成果の把握を行った。そのなかで越前国府については、越前市街地の府中城跡で出土している「国大寺」墨書土器が越前国分寺を示す点から、周辺に越前国府の存在を推定できることを確認した。その他、8世紀前葉に遡る多賀城(陸奥国府)の創建期南辺材木塀、秋田城(出羽国府)の日本海側に開かれた西門の発掘調査現場の視察を行い、奥羽地方における城柵官衙の創設・整備の状況を把握した。 研究成果としては、陸奥国府の検討を行い、多賀城で成立する城柵型政庁の建物配置や建築技術が、前身の陸奥国府であった郡山遺跡II期官衙を継承している点が多い点を指摘し、多賀城第I期の政庁は国家の威容を示すという理念では平城宮に倣ったが、実際の建物構造や技術については都城の直接的な影響はほとんど認められない点を明らかにした。さらに、常陸国府の国庁建物の配置を検討し、奈良時代以降の定型化国庁の成立にあたっては、長舎を主体とした政庁が直接的な祖型となっている場合もあることを示した。また、国庁と郡庁の関係について、初期の政庁については建物構造や配置に共通性が高い点を把握し、祖型は同じだった可能性が高いことを確認した。 平成25年度、国府関連資料の収集や検討について、おおよそ予定の作業を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、古代日本の国家形成の過程を解明するために、国郡制の形成と深く関わる国府の成立について、その実態を明らかにする点にある。古代の国家権力のあり方は、都城や地方官衙に示されており、その画期は7世紀末から8世紀初めの藤原京期にあると考えている。本研究では、藤原宮と地方官衙の成立が密接に関わっている点について、遺構や出土遺物の考古学的研究から論じることにしている。 現在までに、各地の国府とそれに関係する郡衙や生産遺跡(瓦窯など)の資料調査を行い、国府の創設状況について、遺構と出土遺物を中心にして考古学的な把握をすすめている。平成25年度には、当初の研究目標としていた、初期の陸奥国府である仙台郡山遺跡II期官衙と多賀城との関係について、前述したように両者の建物配置などに密接な関係があることを明らかにした。 現状では、予定していた国府を中心とする遺跡について、遺構や出土遺物の資料調査を実施できており、おおむね当初の計画通りに研究はすすんでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、今後の研究の推進方策については、次の課題を解決するために、引き続き各地の国府を中心に資料調査を行うことにしている。 まず、国府、郡衙にみる藤原京の影響について、これまでに7世紀末から8世紀初めの政庁に瓦葺建物が採用された点を明らかにした。さらに藤原京期の瓦を出土する遺跡についての資料調査を行う。次に、都城と地方官衙の景観について、藤原京期の瓦を出土する国府や郡衙について、屋根景観を含めた実態を解明する。藤原宮と異なり、地方官衙創設期の瓦葺建物の多くは屋根の一部を瓦葺きとした甍棟や熨斗棟であり、総瓦葺きとなるのは8世紀中頃の国分寺創建前後と考えている。こうした国府や郡衙の屋根景観を資料調査によって明らかにする。3点目としては、都城と地方官衙の方位の検討を行う。国府、郡衙ともに正方位を採用するのは藤原京期もしくはそれ以降が多く、地方官衙の方位を検討することは、都城と地方官衙との関係を明らかにする有力な材料となる。官衙の方位について、全国的な集成と時期の検討を行い、都城の藤原京と地方官衙との関わりを明らかにする。4点目は、地方官衙創設期の国庁と郡庁の違いを明らかにするために、初期の国庁と郡庁の構造について国単位で政庁を比較して、その異同の検討を行う。最後に、国府成立と国の形成を考えるために、国府や郡衙、駅路などの官道の状況が明らかになっている常陸国、下野国などの検討を行い、国府成立が契機となって、7世紀末頃に国の形成がすすんだことを明らかにする。
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Research Products
(4 results)