2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24520861
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
三宅 俊彦 専修大学, 文学部, 兼任講師 (90424324)
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Keywords | 考古学 / 出土銭貨 / 国際情報交換 / ラオス:台湾 |
Research Abstract |
平成25年度は、銭貨流通に関する新しい情報を収集するため、台湾とラオスにて出土銭の調査を行った。 台湾では淇武蘭遺跡から出土した銭貨538枚を見学することができた。その結果、近世の台湾では中国の明・清の銭貨が流通の主体をなしていたことが明らかとなった。また出土銭の中に日本の寛永通寳や長崎貿易銭の元豊通寳、ベトナムの銭貨なども含まれていることが分かり、当時の東アジアの広範囲にわたる銭貨流通の一端が把握できた。また清朝の銭貨の鋳造地を確認したところ、北京で作られた戸部寳泉局・工部寳源局のものと並んで雲南寳局製造のものが多く見られ、むしろ台湾に近い浙江・江蘇の銭貨はそれほど多くはなかった。これが流入ルートを示すものか、あるいは当時の長江以南の流通銭貨の組成を反映しているものか、現時点では明確ではない。今後の調査により、明らかにしていきたい。 ラオスの調査では、ビエンチャン、ルアンパバーン、シェンクワーンにて調査を実施した。ビエンチャンではラオス大学の発掘調査にて出土した銭貨を見学した。またルアンパバーンでは出土銭の情報を求めて聞き取り調査を行った結果、一括出土銭が発見されたとの情報を得た。残念ながら実物資料の見学には至らなかったが、今後も情報収集を行うことで、出土銭資料が発見される可能性は高い。シェンクワーンではクーン郡イアン村に所在するプー・タット寺院の基壇から、金銀の仏像とともに壺に入れられて出土した銭貨を調査することができた。銭貨は51枚あり、ベトナム銭の景興通宝、景興巨宝、中国北宋銭の皇宋通宝、元豊通宝、熙寧元宝、清銭の康熙通宝、順治通宝、乾隆通宝などを確認できた。清銭には北京鋳造のものも存在したが、雲南鋳造のものも存在した。来年度に再度訪問し、計測や拓本を採るなど精密なデータ化が望まれる。この地域はさらなる成果が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度はインドネシアのジャワ島にて、一括出土銭の調査を行うことができ、大きな成果を得ることができた。平成25年度は当初ベトナムにおいて調査を行う予定であったが、諸般の事情で実施が困難となったため、新しい情報の収集を行うこととし、台湾とラオスで調査を行った。その結果、これまで出土銭の情報がほとんどなかった地域において、あるていど情報を得ることができ、新しい研究課題も見えてきた。その点から、当初予定とは違う地域での調査となったが、研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、前年度に続きラオスでの調査と、まとめのシンポジウムを行いたい。 ラオスでは、特にシェンクワーンにて調査を継続し、前年度に概要のみを把握したプー・タット寺院の基壇出土の銭貨を詳細に調査し、資料化を行う。あわせて、新しい出土銭の情報収集も行いたい。 また次年度は本研究課題の最終年度にあたる。これまで調査の概要をまとめ、研究成果を周知するため、シンポジウムを行いたい。報告者はこれまで調査に参加した日本の研究者を中心にするが、一部国外の研究者も招聘することとしたい。その際に資料集の形で研究成果をまとめ、刊行する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ラオスの調査に、研究代表者の三宅が参加できなかったため、残額が生じた。現地へ移動する日(2014年2月9日)に、関東を中心に記録的な大雪となり、成田空港への交通手段が絶たれた。このため調査に行くことができず、航空券と出張旅費が支出されなかった。 残額は、次年度分として請求した助成金と合わせ、ラオスでの調査およびシンポジウム開催のための費用として使用する。
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