2012 Fiscal Year Research-status Report
農耕民の人為景観化と民俗方位観念生成の相互作用に関する研究
Project/Area Number |
24520865
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
北條 芳隆 東海大学, 文学部, 教授 (10243693)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 景観史 / 水稲農耕民 / 民俗方位 / 八重山地域 / 古墳時代 |
Research Abstract |
今年度は、沖縄県八重山郡竹富町所在網取遺跡において現地調査を実施した。対象としたのは、①民俗方位観の生成を基層で支えたと推定される集落域の東西両境界部に設けられた宗教的施設としての「ブシヌヤシキ」(北西側)と「メブシの墓」(南東側)の現況確認である。後者については所在地を確認でき、墓の実測作業、周辺地形測量を実施した。なお後者については密林化した植物が生い茂るために現地の周辺地形再測量や試掘調査を断念し、上方からの写真撮影に止めざるを得なかった。②集落内における最古の居住域と推定された「ヤンデーヤ地区」・「カイメーヤ地区」の発掘調査である。前者については調査の結果、基盤層までの堆積が薄く、予想に反して本地区の土地利用はごく最近であることが判明した。いっぽう後者については近世初期の遺構が比較的良好な状態で遺存することが確認できた。上記のような基礎情報の把握に至ったことが主たる成果である。 現地調査の後、出土品の整理作業と貝類等の同定作業を鋭意進め、今年度の発掘調査成果の概要を報告した。 併せて今回の研究の目的に則して、調査成果を基本モデルとし、景観史把握に結びつけるための試案を提示した。具体的には日本列島の人類史において宗教施設が顕在化する古墳時代史把握への応用可能性についてのシンポジウム、学会発表、論文執筆と刊行を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
沖縄県域での現地調査に併行して実施した奈良盆地における前方後円墳の配列や方位と周辺の山帯との関連性についての理解が飛躍的に進むことになった。そのため、基本モデルの構築以上に、応用事例の側の整理が当初の予測以上に進展したと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、まず昨年度に引き続き沖縄県域における現地調査を進める予定である。ただし当初予測とは異なった状況が判明したため、調査対象を「カイメーヤ地区」に限定する。 さらに当初計画どおり、沖縄本島における民俗方位の生成過程についての検証を進める。 併せて次年度は、応用事例の側の奈良盆地での現地調査を下半期に集中的に行い、当初の予想以上に進展した宗教的諸施設間の配列や方位関係についての研究を進めたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
基本的に現地での発掘調査に関わる旅費、用船費、分析委託費について、本助成金を使用する。特に次年度は、出土魚骨の分析・同定費、土壌分析費等への支出の比率が高くなる。
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