2014 Fiscal Year Annual Research Report
農耕民の人為景観化と民俗方位観念生成の相互作用に関する研究
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24520865
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
北條 芳隆 東海大学, 文学部, 教授 (10243693)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 水稲農耕民 / 太陽の運行 / 二支二分 / 考古学 / 前方後方墳 / 前方後円墳 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度となる平成26年度は、西表島網取遺跡で確認された東西方位を重視する観念と、沖縄本島の琉球王朝や日本列島本州域の様相との比較を行い、普遍性の有無や特殊性のありようをした。 ごく単純化すれば、太陽の運行方向を軸に宗教的施設を配置する営みだと捉えられ、いわゆる「太陽信仰」に属する営為だと理解されるのであるが、沖縄では浦添グスク(冬至の日の出の方位に遙拝所を設置)、近畿地方では唐古・鍵遺跡の大型建物から観測される年間の日の出(龍王山山帯の主要な嶺峰)と歳事の関係が指摘できる。原始的な暦が太陽の日の出との関係で機能した可能性も高く、大和東南部古墳群の配列は、この唐古・鍵遺跡で観測された年間の日の出の範囲に規定され、春分・秋分の日の出となる龍王山520mピークを古墳群の中心軸線とする。要するに、水稲農耕民が抱く方位観念は太陽の運行を基本とするものとして、東アジアのほぼ全域に適用可能であり、きわめて長期間の持続性をもって維持・再生産された構造だと理解されることになった。 一方日本列島の特殊性としては、火山信仰が挙げられる。この点については佐賀県吉野ヶ里遺跡において雲仙との関係で指摘されてきたいことであるが、富士山との関係も指摘可能であり、静岡県や神奈川県に所在する初期前方後方墳と火山との方位関係において、さらに関東の内陸部にも延伸する形で証明可能であることを現地調査の結果判明した。以上が本研究の総括的な理解である。 なお網取遺跡の発掘調査では、本年度新たな発見があった。それは水田養殖の痕跡であるマルタニシの殻が近世併行期のゴミ坑遺構から一括出土いたことである。この発見によって、沖縄八重山地域においても、水稲農耕と水田養殖はセットになっていたことが確実視されることになった。この発見を機に、今後は水田環境に再度注視しつつ、水稲農文化の実態解明を目指したいと思うに至った。
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