2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24520870
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
高 正龍 立命館大学, 文学部, 教授 (40330005)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 韓国 |
Research Abstract |
本研究は、個人申請ではあるが、東アジア梵字文化研究会のメンバーと行う共同研究の形をとっている。平成24年度も原則として、月1度の例会を開いて、これまでの韓国における現地調査をおこなった梵字資料や、図録等で検索できた遺物の検討を行っている。8月には『歴史考古学』65・66合併号を、韓国梵字の特集号として、平成21・22年の2年間の調査成果をまとめ、刊行することができた。ここでは梵鐘の梵字について、①真言の傾向、②六字大明王真言、③梵字の字体について考察を行い、成果を収めた。引き続き、平成23・24年の成果を刊行できるように準備を進めている。 韓国の現地調査は、東アジア梵字文化研究会として、例年通り8月に実施し、現地からは嚴基杓氏(檀国大学校教養学部教授)、金大煥氏(江南歴史文化研究所理事)の2名が合流した。江原道を中心に、寿陀寺、霊穴寺、明珠寺、月精寺、新興寺、洛山寺、乾鳳寺、安養庵、国立春川博物館、関東大学博物館、韓国美術博物館などの梵字資料を調査した。このうち、月精寺は聖宝博物館を併設して、多くの梵字資料が所蔵されており、悉皆的な調査を行った。寺側では梵字の内容について大まかでも、知りたいということで、それに応えて帰国後すぐに検討会を行い、簡単な略報告を10月に提出している。多くの資料をもつ寺院の検討は梵字がどのように使われ、変遷をとげていくのかを見極めるために重要であると考えている。なお、高は、平成25年3月に単独で、ソウル周辺で資料収集を行っている。 10月には筆者が編集する『東アジア瓦研究』2号で、日本の梵字瓦に対する論考1本、資料紹介1本、韓国の梵字瓦の論考1本という梵字瓦のミニ特集を組んだ。併読すれば両者の違いについては理解できるようになっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の柱は、①梵字が施された各種資料の集成と検討、②寺院ごとの梵字資料の調査と検討、③中国梵字資料の集成と検討、④異体字の整理である。そのうち、平成24年度は①を重点的に行ってきた。とくに、江原道の調査では浮屠、石碑を中心に石造物を中心としていたために、手薄であった石造物についても嚴基杓氏の「高麗・朝鮮時代の石造美術と梵字真言」(『歴史考古学』にメンバーの横田明氏が訳出)を基軸に、検討を行い、嚴氏誤りを修正することができた。上記研究実績の概要でもふれたように、②については準備段階として位置付けていたが、おもいがけず、月精寺で多くの資料と遭遇することができるなど、おおむね順調に進展しているといえよう。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者は平成25年9月下旬より1年間、韓国の檀国大学校に外留の予定になった。そのため、この1年間で少なくとも、可能なかぎり梵字が施された各種資料の集成は終えようと考えている。周知のものでないものも数多く存在するため、完全な目録つくりは難しいだろうが、それに近いものをできればと考えている。また、寺院の悉皆調査を協力してくれそうな寺院をやはり、留学中に粘り強く交渉を行いたいと考えている。 中国の資料については、石刻の資料があれば、より望ましいが、拓本などが公開されているものは少ないようである。そのため、金工品(銅鏡、梵鐘、仏具など)が中心となる。中国鏡の図録などを丹念にあたって、韓国のものと比較しながら、梵字の字体、意味などを明らかにしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費では撮影機材などの購入を考えている。 旅費は、8月に東アジア梵字文化研究会の韓国調査、日光輪王寺の調査、9月以降の韓国内での調査にあてたい。8月の調査では昨年度と同様に韓国の研究者との合同調査とし、議論を深める機会ともしたい。対象地域は、全羅南北道を予定している。 人件費・謝金は歴史考古学の編集作業、9月以降は韓国での研究をすすめるために、条件が整えば、現地で院生を雇用したい。
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