2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24520872
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Koriyama Women's Junior College |
Principal Investigator |
會田 容弘 郡山女子大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (40192835)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 石器技術学 / メトード / テクニーク / 石刃 / 間接打撃 / 石器製作実験 / 動作連鎖概念 / 石器技術学研究会 |
Research Abstract |
石器製作のテクニークを同定するために、異なったテクニークによる石刃製作実験を行い、その痕跡の違いを明らかにするための基礎資料製作を行った。打撃方法、間接打撃のパンチの形状及び石材をコントロール要因とし、石刃打面に起こる加撃時の特徴を示す資料を蓄積することができた。 間接打撃の確実な資料を得るために、新潟県津南町の石刃石器群と山形県内の石刃石器群の資料調査を行った。両地域の石器石材は基本的に珪質頁岩を用いるが、津南町の石器群は在地石材の安山岩や凝灰質頁岩など多様な石材を用いている。その結果同一の加撃法でも割れに異なった結果が表れる可能性を確認した。この結果を受けて、在地石材を用いた石器製作の基礎実験が必要であることが明らかになった。 石器製作技術のメトードを明らかにする方法を確立するために、福島県笹山原遺跡No.16、山形県高瀬山遺跡出土資料の接合作業などの石器群分析を行った。笹山原遺跡は石器石材が凝灰質頁岩という在地石材を用いているため、その石材による制約が大きいことがわかった。7000点にも及ぶ資料のため、接合作業には更なる時間を必要とする。 課題研究を推進するために、石器技術学研究会を組織し、担当者、研究協力者、招待者による研究会を京都大学文化財総合センターで平成24年8月31日~9月2日、平成25年3月1日~3月3日に実施した。研究会では研究方法の検討と事例研究発表、石器製作実験を行った。石器技術研究が動作連鎖概念を用いて、製作の過程に資料を置き戻すことが重要であること、型式学的研究とは全く異なったものであることを確認した。これにより、研究課題及び問題点を整理することができ、それらを研究者間で共有することができ、今後の研究の方向性が決まってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
製作実験の積み重ねにより、我々の石器製作技術は出土遺物と実験品を見比べてみても遜色ないところまで達した。それによって、実験考古学としての研究基盤が確立したといえる。今後、多様な石材を用いた石器製作にも対応できる石器製作実験技術の進捗が望まれる。 間接打撃による石刃剥離を行っていると考えられる資料を新潟県津南町で確認し、その中の楢ノ木平遺跡の発掘調査が可能であるとの感触を得た。この調査を実施し、確実な資料と理化学的年代を得ることができれば、本研究の当初の目的が達成される。 これまで得られた資料の接合作業を継続することで、石器製作のメトードが徐々に明らかにされている。資料分析を継続することで、研究方法の一定の枠組みが確立してきた。石器技術学研究の手続きを明示することができるようになったことは、未開拓な研究分野の研究方法を確立するうえで重要である。 石器技術学研究会を組織したことで、研究者間の意見交換を活発にできるようになった。そこに山中一郎京都大学名誉教授に参加していただき、研究の方向性について具体的に指導を受けることができた。そして、それを研究者間で共有することができている。
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Strategy for Future Research Activity |
石刃製作のテクニーク及びメトードについて、ある一定の共通理解をえることができた。これからは笹山原遺跡No.16、高瀬山遺跡、横道遺跡の研究では十分解明できなかった点を明らかにする必要がある。それには、間接打撃による石刃剥離を行う石器群の発掘調査を行い、得られた資料を石器技術学的に研究し、また、その遺跡の理化学的年代測定を行い年代上の位置付けを確定することが必要である。一方で、石器石材の多様性が石器製作技術とどのように対応するかという大きな問題が生じている、それを解決するためには、実際に用いられている石材を用いて石器製作実験を行い、テクニークの明らかな実験試料との比較研究が不可欠である。そのためのさらなる石器製作実験の蓄積が必要である。 これらの課題を受けて、調査する遺跡を新潟県津南町楢ノ木平遺跡に定めた。楢ノ木平遺跡は1960、75、99年に発掘調査が行われている。津南町保管資料を調査したところ、間接打撃の痕跡の可能性を確認することができた。この遺跡は理化学的年代測定がおこなわれていない。資料のさらなる充実と年代決定を行うために、楢ノ木平遺跡の発掘調査を行い、その資料を石器技術学的に研究することが必要である。 石器製作技術の同定方法及び実験による石器製作技術のさらなる進歩が必要である。そのためには、石器技術学研究では世界最高水準をほこるフランス国立科学研究所のJ.ペルグラン博士との研究連携が不可欠である。博士と密な連絡をとり、研究の助言を受けたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
新潟県津南町楢ノ木平遺跡の発掘調査を実施する。発掘調査を実施するにあたり、担当者旅費、研究協力者旅費、作業員賃金、機材借り上げ料、謝金などに研究費をあてる。発掘調査は約1週間の予定で実施する。その後、得られた資料と先に発掘調査で得られた資料を合わせて、調査研究をおこなう。 楢ノ木平遺跡発掘調査の成果と資料研究結果を受けて、第3回石器技術学研究会を開催し調査成果の検討、及びこれからの研究方向について検討する。研究会を開催するにあたり参加者に旅費を支給する。
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Research Products
(4 results)