2013 Fiscal Year Research-status Report
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24520872
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Research Institution | Koriyama Women's Junior College |
Principal Investigator |
會田 容弘 郡山女子大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (40192835)
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Keywords | 石器製作技術 / 石刃剥離 / 間接打撃 / 後期旧石器時代 / 国際情報交換 |
Research Abstract |
後期旧石器時代における間接打撃による石刃剥離の存在を証明するために、かねてより注目していた新潟県中魚沼郡津南町楢ノ木平遺跡(新潟県遺跡番号99-62)の発掘調査を2013年4月27日から5月5日まで実施した。その結果、出土位置を記録した石器193点、水洗選別で検出した石器約50点を得た。放射性炭素年代測定を4点行ったが、4点とも11,300年前後の年代を示し、これまでの年代観とは異なる結果となった。今次調査で得られた資料と第2次調査で得られた資料を検討し、間接打撃の可能性が高い資料を山中一郎博士を介して、フランスの研究協力者であるJ.ペルグラン博士に実際に観察してもらったところ、「間接打撃の可能性が高い」という見解を得た。今後、楢ノ木平遺跡の第1次調査資料と合わせて、検討を進めて行く予定である(第27回東北日本の旧石器文化を語る会にて口頭発表及び予稿集に「新潟県津南町楢ノ木平遺跡第3次発掘調査」として報告を掲載)。2013年にはこれまでに調査してきた山形県高瀬山遺跡、宮城県薬莱原No.15遺跡の資料分析を継続した。薬莱原No.15遺跡の技術学的分析結果は加美町教育委員会刊行『薬莱原No.15 遺跡II』の「付章4 薬莱原No.15遺跡における石器製作技術分析」として発表している。薬莱原No.15遺跡の石刃剥離は有機質ハンマーの直接打撃と軟石ハンマーの直接打撃によるものが存在し、間接打撃の技術は確認できなかった。 この研究に伴い組織した「石器技術学研究会」は2013年8月30日から9月1日に第3回研究会を京都において開催し、国内研究協力者との情報交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本後期旧石器時代に間接打撃による石刃剥離が存在するという事実はほぼゆるぎないものになっている。しかしながら、理化学的年代測定結果が安定していない。誰もが納得できる間接打撃の痕跡を見出すところまで研究はまだ到達していない。 考古遺物の基礎資料の蓄積はほぼ十分であるが、テクニークを証明する間接打撃による実験石器がまだ不足している。日本の旧石器研究で大きな問題になる多様な石材を網羅する、製作実験資料が必要である。 もう一点重要な点は、間接打撃を判定するための分析の論理が確定していない。間接打撃の傾向性は把握できているが、決定的な証拠がまだ不十分である。その意味で、まだ研究の再現性が不足している。 これらの点を補うことができれば、研究はさらに進展する。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度が本課題の最終年度である。石器製作技術研究の世界最高水準にあるフランスCNRSのJ.ペルグラン博士の招聘を交渉中である。9月後半に来日することがほぼ確実視されている。ペルグラン博士を囲み、我々の判定した間接打撃の特徴をもつ石器群を検討する計画である。さらに類似資料の検討とペルグラン博士と大場正善博士による石器製作実験を計画している。このような形で国際研究者交流により石器製作技術の技術学的研究が進展することが期待される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年の主要計画である楢ノ木平遺跡発掘調査と研究会を終えることができた。次年度は最終年度で、フランスからJ.ペルグラン博士を招聘する計画である。本研究を開始した時点では、円高・ユーロ安であったが、昨今円安・ユーロ高の傾向が動かない。ペルグラン博士招聘のための旅費は約1.5倍になる。よって、支出をできる限りおさえ、ペルグラン博士の招聘と研究会を実施するために、できるだけ最終年度に補助金をまわしたいと考えた。 計画最終年度である本年は、フランスより招聘するJ.ペルグラン博士を交え、発掘調査で得た資料をもとに、調査協力者らと研究会を開催し、本研究の成果をまとめる予定である。よって、本年度予算は研究会実施のための旅費及び実施諸経費として利用する予定である。
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Research Products
(5 results)