2015 Fiscal Year Annual Research Report
前期古墳出土鉄製小札革綴甲冑の復元的研究-黒塚古墳出土品をモデルとして-
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24520881
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Research Institution | Kashihara Archaeological Institute , Nara prefecture |
Principal Investigator |
卜部 行弘 奈良県立橿原考古学研究所, 企画部資料課, 総括研究員 (70260370)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水野 敏典 奈良県立橿原考古学研究所, 調査部調査課, 総括研究員 (20301004)
奥山 誠義 奈良県立橿原考古学研究所, 企画部資料課, 主任研究員 (90421916)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 三次元計測 / 復元品製作 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、東アジアにおける3世紀から4世紀にかけての鉄製小札革綴甲冑の系譜関係および流通関係を明らかにすることである。この目的のため、①黒塚古墳出土甲冑の三次元レーザー計測、②黒塚古墳出土小札革綴甲冑の復元品の設計と試作品製作、③黒塚古墳出土革綴甲冑の復元品製作、④類例調査、の4項目を実施している。 最終年度の平成27年度は、本研究の大きな柱である③復元品製作に取り組み、その参考のために④類例調査を実施した。小札革綴冑の復元については、前年度までに完成した試作品の寸法を修正し、また頭頂部の閉塞を改変した。復元小札の素材はアルミ材とし、寸法と形状は腰巻板に遺存する実資料の三次元レーザー計測に基づいて標準モデルを作成した。完成した復元品は、腰巻板1段に小札12段が立ち上がる構成で、大きさは高さ25㎝、底径21㎝、使用小札枚数は300点である。 甲については、実資料からは長さ53㎝の横長鉄板の両端から長さ30㎝の鉄板が下窄まりに垂下し、これらの鉄板をフレームとしてその内部を縦9段、横14~28枚の小札が横と縦に綴じ合わされる構成が復元された。この構成品については、甲の後胴部に相当すると想定した。復元小札の製作は冑使用小札に倣った。完成した復元品は横54㎝、縦28㎝、使用小札枚数は196点である。このほか、縦16㎝、横4.8~6.7㎝の円頭下直裁を呈する鉄板が24枚確認しており、これについても横一連に綴じ合わせて復元品を製作した。 黒塚古墳出土甲冑を構成する小札は、前漢代以降にみられる魚鱗甲と呼ばれるものであり、国内出土品においても基本構成が共通する冑の類例がみられる。一方、甲およびその他の構成材には類例のない鉄板が使用されており、中国出土資料にも類例はみられず、黒塚古墳の特異性が改めて浮かび上がった。また、復元製作への三次元レーザー計測利用の有効性を確認した。
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