2013 Fiscal Year Research-status Report
東日本大震災による被災地域の水産業・水産加工業の復興に関する研究
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24520885
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
初澤 敏生 福島大学, 人間発達文化学類, 教授 (10211476)
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Keywords | 水産業 / 震災復興 / 漁業資源管理 / 地域HACCP |
Research Abstract |
平成25年度は被災地調査として宮城県石巻市の調査を行った。被災前の状況を把握した後に被災状況とそれからの復旧の状況等についてヒヤリングを行い、現状と課題を把握した。ここでは特に港湾施設の復旧状況について詳細に検討し、復旧と行政による計画立案との時期的な差から合理的な施設復旧となっていないことなどを把握した。一方、加工工業については補助金等によって復旧が急速に進み、加えて新鋭設備が導入された結果、震災前の生産能力を上回り、水産物の水揚げとの間でギャップが生じていることなどを把握した。 また、昨年度の調査から被災地では復旧を急ぐあまり震災前に行われていた資源管理がおろそかになっており、今後の資源管理に懸念を抱かざるを得ないような状況が把握された。そこで、今年度は資源管理によって漁獲を回復させた秋田県のハタハタ漁を事例として調査し、資源管理を進めるための地域的協力体制について調査を行った。特に漁民間での合意形成のあり方について注目し、合意形成のあり方が漁協間で異なることなどを把握した。 また、今年度は福島の水産業の復興方向を探るために、かつて風評被害によって大きく売上が落ち込んだ北海道標津町の調査も行った。ここでは消費者の信頼を回復するために地域HACCP制度を導入して徹底した衛生管理を行い、それを通して消費者の信頼を回復させるという方法をとった。これにあたっては、漁業者、漁協、加工業者、流通業者、行政が一体となって協力体制を作り、対応している。この手法は福島の水産物に応用することも可能であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
被災地域の漁民調査に関しては、現在も不安定なところがあり、詳細な調査は難しい状況が続いている。そこで本年度は将来的な復興方向を示すための内容を取り入れて研究を進めた。特に風評被害対策と漁業再開後の資源管理に注目して事例調査を行った。これらは水産業復興の方向性を示すための基礎調査として重要であり、一定の成果を上げたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は大きく2つの方向から進めていきたいと考える。 一つは従来通り被災地域の水産業地域に地域研究で、被災地域を調査し、その実態と課題、今後の復興方向などを把握する。しかし、震災後3年を経過しても依然として被災地は不安定な状態が続いており、詳細な調査が難しい状況も予想される。被災者との関係性を考えれば、無理な調査は行うべきではないと考える。 そこで、もう一つの方法として、過去に同様の問題に直面した地域の経験から復興方策を検討するという方法を追加する。今年度の標津町の調査はその公的な事例の一つであると考えられ、それを掘り下げていくことがら新たな方向性が見いだせる可能性がある。また、水俣病の問題から立ち直った八代海漁業の復興も類似する事例として重要であると考えられる。 また、資源管理の問題も依然として重要である。水産業の復興は急務の課題であるが、その結果、資源を失ってしまっては持続的な成長は不可能になる。ただしそのためには地域(漁協)内部における漁民間の合意形成が課題であり、その方法は地域によって異なる。これらの点も明らかにしていくことが必要であると考える。 今年度はこれらの事例を視野に入れながら研究を進めていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実地調査を行うにあたり、調査対象との日程調整などの関係で日程に若干の変動が生じた。 新年度の旅費に追加し使用する。
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