2015 Fiscal Year Research-status Report
東日本大震災による被災地域の水産業・水産加工業の復興に関する研究
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24520885
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
初澤 敏生 福島大学, 人間発達文化学類, 教授 (10211476)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 東日本大震災 / 水産業 / 復興 |
Outline of Annual Research Achievements |
福島県水産業の復興について検討するため、福島県いわき市漁協を対象としてヒヤリング調査を実施した。そこでは、震災・原発事故後の操業停止から試験操業開始までの流れ、試験操業の内包している課題、市場の復興と再配置、東京電力による賠償の制度などに関して調査を行った。この結果は平成28年3月の日本地理学会において報告した。 この他、宮城県気仙沼市においても水産業・水産加工業の復興状況に関してのヒヤリング調査を実施した。 この調査の中から、「ブランドの再建」という課題が導き出された。風評被害などにより下落してしまった製品価格を再度上昇させるための方策として、「ブランド化」は有力な手法の一つである。しかし、多くの地域がそれに取り組みながらも必ずしも成功には至っていない。そこで、水産物・水産加工品のブランド化に関して、理論研究と成功事例の実態調査から検討を加えた。前者に関しては文献研究が、後者に関しては地域調査が中心になる。事例地域としては、青森県下北半島を取り上げた。下北半島では小規模な市町村がそれぞれ水産物のブランド化に取り組んでいる。今年度は「大間町のマグロ」と「風間浦村のアンコウ」を事例として取り上げ、調査を行った。特に風間浦村ではアンコウを外部に出荷するだけでなく、村内の温泉旅館のメニューと結びつけることによって地域の経済振興と結びつけていることをとらえた。この点はさらに深める予定である。 また、原子力災害を公害の一種ととらえる視点も重要である。そこで、重篤な公害による汚染から復活をとげた水俣市の水産業の復興過程を明らかにすることが福島の水産業復興のサン買うになると考えた。今年度は予備調査の段階であるが、来年度にこれを深化させる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
東日本大震災からの水産業・水産加工業の復興を研究するにあたって、被災地調査を軸に進める予定であったが、被災地は様々な問題を抱えており、外部から詳細な調査を行うことが難しかった。この結果、昨年までの研究進行の予定が遅れてしまった。この調査の遅れが最大の原因である。 そこで、今年度は被災地調査を進めつつも、課題の洗い出しと復興の方向性を明らかにすることに重点を置き、その具体的な方向性を指し示すことを通して被災地の復興を進めるという視点を取り入れた。上記の「ブランド化」はその一例である。この結果、研究のスピードアップが可能となり、28年度中に当初の目的を達成できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度は「水産物のブランド化」を軸に調査研究を進めていく予定である。やや遅れている調査のスピードアップを図るため、調査地域とのパイプを持つ他大学の教員にも協力を求め、調査を進めていく。これと合わせて「ブランド化」に関する理論研究も進める。調査対象地域としては、前年度に引き続き、青森県の下北地域を取り上げる予定である。なお、その他に調査敵地があれば、順次調査を行う。 また、水俣の水産業復興に関する研究も進める。これまでの予備調査から、福島の状況と水俣の状況は共通点が大きいことが明らかになっている。両者の比較検討から、水産業復興のモデルの一つを作り上げたいと考えている。 これらと合わせて、被災地の水産業・水産加工業の復興に関する調査研究を進めるていく。 なお、今年度が最終年度にあたるため、研究成果のとりまとめと報告書の作成も大きな課題である。これまでに実施した調査やそれをまとめた学会発表などを取りまとめ、論文等の執筆を進めていく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が発生した最大の理由は前年度までの未使用額が累積して大きくなってしまったことである。その理由は、前述のような調査の遅れにある。28年度はこれを回避するため、調査地域とパイプを持つ他大学の研究者の協力を得て調査を進める。これにあたっては、本研究費から、協力を得る研究者の旅費を支出する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度は前述のように青森県の下北地域と熊本県の水俣市を中心に調査を進める予定である。それに必要な旅費(協力者の旅費を含む)を確保した上で、残額を参考図書や消耗品の購入に充てる予定である。
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