2012 Fiscal Year Research-status Report
成熟住宅地の持続的発展に向けた環境整備に関する地理学的研究
Project/Area Number |
24520887
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
香川 貴志 京都教育大学, 教育学部, 教授 (70214252)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 持続的発展 / 成熟住宅地 / バリアフリー / ユニバーサルデザイン / 都市計画 |
Research Abstract |
まず基礎的な研究資料となる『全国マンション市場動向』(2011年版)を購入し、対象地域の一つである千里ニュータウンとその周辺地域でのマンション供給のデータ入力を行った。 実地調査は夏季に千里ニュータウンの公営住宅を対象として、居住者による生活環境評価のアンケート調査およびインタビュー調査を行った。この際に通常切手、タックシール、インタビュー協力者への謝金代わりの粗品、宛名管理ソフトを購入した。また何度かの現地調査で交通費が発生している。この研究内容については、3月に中国・上海(日中都市観光経済国際研究会)でアウトラインを口頭発表で公表した(渡航費は別費用から支出)ことに加え、2013年夏の国際地理学会でも発表が受理されている(登録料は当基金の今年度分から支出)。また、千里ニュータウンの環境変化に大きな影響を及ぼしている周辺や内部における住宅開発(再開発)に関して、日本地理学会2013年度春季学術大会で研究成果を公表した。 日中関係の悪化に伴って、中国の庶民的な成熟住宅地での調査が困難になったため、代替フィールドを求めてロンドン郊外のレッチワース(世界最古の田園都市)で予備的調査を行い、旅費節約のため連続してバンクーバー、パース、バンコクでも予備的調査を実施した。このうちレッチワースについては既に小論文を啓蒙雑誌(「地理」58-5,2013)に発表し、研究成果の社会還元を果たした。 また、フィールドの一つであるパースでは、計3地区で予察的調査が実行できた。このうちの一つを対象としてインテンシブ調査を企画中である。バンコクについては、別費用で2月に再渡航して調査を行い、順調にデータ収集ができた。このデータについては現在分析を進めており、早ければ今年度末に調査結果を口頭発表できる見込みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中国・上海でフィールドに選定していた田林新村が、現地の研究協力者(上海師範大学の王承云教授、上海工程技術大学のChu Jinfeng副学長)から「日中関係を鑑みるとインタビュー調査は現状では極めて難しい」との示唆を得て、実質的に調査不可能となった。そのため、成熟住宅地を求めて、英国のレッチワースを新たなフィールド候補に選定し、そこで予備的調査を行ったが、フィールドに選定できる要件を備えていることが確認できたため、フィールドの一つを変更することにした。研究成果も既に公表しており、現地で得た資料(英文の単行本)の文献解題(あるいは書評)も執筆中である。 この他のフィールドについても、バンクーバーでは鉄道駅のバリアフリー達成度の調査をおよそ半分の駅で終え、アンケートまたはインタビュー調査の対象となる住宅地も視察することができ、対象地域を郊外のサレー市キングスクロス地区、もしくはバンクーバー市ウェストブロードウェイ地区に内定した。パースもインテンシブ調査のフィールドを絞り込み、おおむねパース西方のスビアコ地区で調査をすることを決めた(申請段階ではフリーマントルを対象にする予定であったが、同所は想像以上に観光地化が進んでおり、研究対象としては比較対象にとどめることとした)。バンコクについては、当初の目標以上に調査が順調に進展しており、フィールドであるトンソンホン地区(バンコク北郊)で期待以上のデータの収集に成功している。トンソンホンでは現地の公的機関、企業、老人会もかなり協力的で、研究成果がまとまった段階で、集会所を借りて現地報告会を実施する約束を交わしている。こうした市民への成果還元が本研究の最大目標であるだけに、この報告会の様子は国内でも公表したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定していたフィールドのうち、中国・上海の田林新村だけが調査困難なため英国のレッチワースに変更を余儀なくされたが、現段階ではすべてのフィールド(レッチワース、バンクーバー、パース、バンコク、千里ニュータウン)で調査を遂行する目途が立った。なお、田林新村についても調査を諦めたわけではなく、最後まで調査の可能性を追求したいと考えている。 今年度は、研究を予察段階の調査から一層進展させ、少なくとも2つの地域に関して研究成果を公表できるよう努めたい。うち、一つは国際学会を予定しており、すでに国際地理学会京都地域大会において、千里ニュータウンの持続的発展に向けたバリアフリー対応の研究を公表することになっている(実行委員会による事前審査を経て受理済み)。 国際学会への対応が、大会運営も含めて必要であるため、研究を深化させるフィールドワークは、その多くが2014年に入ってからにずれ込みそうな懸念がある。しかしながら、それまでの間に国内でも出来るデータ処理、論文執筆などを進めていきたい。また研究成果の公表は、学術専門的な学界だけでなく地理教育界や一般を対象としても積極的に進める。したがって、論文類の投稿は学術専門誌の他、啓蒙雑誌などもターゲットにする予定であり、それが本研究のチャームポイントの一つでもある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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