2013 Fiscal Year Research-status Report
成熟住宅地の持続的発展に向けた環境整備に関する地理学的研究
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24520887
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
香川 貴志 京都教育大学, 教育学部, 教授 (70214252)
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Keywords | 少子高齢社会 / 脱成長社会 / バリアフリー / ユニバーサルデザイン / 千里ニュータウン / バンクーバー / 公共交通機関 / PFI |
Research Abstract |
平成25年度は、(1)購入した統計の数的処理と分析、(2)バンクーバー大都市圏におけるバリアフリー調査(比較検討のためサンフランシスコ・ベイエリアを調査)と発表(日本都市学会)、(3)前年度実施の千里ニュータウン調査の分析と発表(国際地理学会議[京都])が主な仕事であった。 上のうち(1)は、啓蒙雑誌に成果の一部を発表したことに加え、現在執筆中の論文(単行本に収録予定の日本語論文1本)でも成果の一部を公表できる。出版は今秋~来春の予定である。(2)は昨年11月の日本都市学会大会で成果を口頭発表した。この成果は論文としては「京都教育大学紀要」125号に投稿中である。査読制なので掲載は確約されていないが、受理されれば雑誌は2014年9月末日に刊行予定である。(3)は脱成長社会における成熟住宅地の実例として千里ニュータウンを取り上げ、少子高齢社会のもとでの高齢者の生活空間について考究した。成果を国際学会で公表出来たため、日本のニュータウンでは海外で最も著名な千里の現状と問題点、さらにその問題点の解決方法の模索について情報発信ができた。 上記の研究活動により、4つの設定フィールドのうち、国内(千里ニュータウン)と北米(カナダ・バンクーバー大都市圏)では文章化の目途が立ったが、残り2つのメインフィールドでは、初年度(2013年2月)に調査を実施したバンコク郊外が分析途上である。もう1つのフィールドであるパース郊外は予備調査の結果、若干の調査目的修正が必要だと判断し、2014年1月に再調査を予定していたが、私的な事情でそれが叶わなかった。そのため、180千円程度の剰余金が生じた。これらのフィールドの他にも、調査の過程で比較検討のためのサブフィールドの候補が得られたため、他の予算(配当経費)も活用しつつ研究の深化を図る。その一部については啓蒙雑誌等で成果を前年度に公表済みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね当初の予定通りに進展し、研究成果の公表についても口頭発表と論文の双方で実現できている。しかし一方で、いくつかの部分で若干の遅れと変更点が生じている。 一つは前年度(平成24年度)に現地調査を終えたバンコク郊外のトンソンホン地区の地域分析の遅れである。理由はタイ語から日本語への翻訳の研究補助者の確保に手間取ったこと(現在は内諾を得ている日本語・日本文化研究生が1名いる)、タイの内政不安が原因の渡航自粛である。政情が安定し、分析中の研究成果がある程度上がれば、日本国内の学会だけでなく、調査対象地域のコミュニティにおいても成果還元を図る予定である。 もう一つの順調さに欠ける点は、オーストラリア・パース郊外の調査で若干の内容変更を要することである。そのための現地調査が私的な事情により実施できなかったため、平成26年度に再調査に赴きたい。当初の予定では対象地域のフリマントルが予想以上に観光地化していたため、時代の流れに対応した旧来の市街地の変質(再活性化への取り組みとその評価)に焦点を当てる。平成24年度の予備調査で一般市民に対する聴き取り調査が難しいことも判明した(協力が得にくいことや英語が聴き取りにくいことなど)ため、公的機関での情報収集と聴き取り、現地調査へと若干の方法変更を考えている。また予備調査の際、再開発が進んでいる成熟住宅地と判断できた、パース西郊のスビアコにおいてもフリマントルとの比較を試みたい。 このように種々の理由で変更や遅れを生じている部分はあるが、既に成果の一部を公表している対象地域においては、研究成果の深化を図る段階に進めているため「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
メインフィールドとなる4つの対象地域(成熟住宅地)を中心として述べるため、比較考察のためのフィールド(他の予算も併用して実施)については記述を割愛する。 (1)千里ニュータウン:既に数本の論考を公表しており、その成果を基盤として一層の進展が見込める。継続観察が必要な統計は入力作業を引き続き行う。 (2)バンクーバー大都市圏:成果公表の目途は立ったが、今後に他のフィールドとの比較考察を施す場合に備え、周遊航空券などを活用して経費節減を図りながら補足調査を予定している。事実確認が必要な事項があるため、気候が安定している平成26年6月に1週間程度の補足調査を行う(本務では補講等で休講分の代替措置を実施済み)。 (3)バンコク郊外のトンソンホン地区:アンケート調査と基礎的な地図と統計の収集は終えているので、今年度は調査結果の分析と考察が中心となる。今年度内に国内学会での口頭発表で成果還元を予定している。 (4)パース郊外のフリマントルとスビアコ:調査内容の変更を余儀なくされたため、今年度中に最低1回の現地調査を実施する。気候が安定する春季から夏季(日本での秋季から冬季)に現地調査を行うことになると考えている。そのため結果の公表は次年度(平成27年度)になると見込まれる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
私的な事情により、2014年2月に予定していたパース郊外(オーストラリア)の調査が実施できなかったため。 今年度の9月もしくは2015年2月(いずれも講義が設定されていない期間)にパース郊外の調査を実施予定。時間と旅費節約のため、環太平洋周遊航空券を活用してバンクーバー大都市圏およびバンコク郊外の補足調査を連続して実施することもあり得る。
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