2014 Fiscal Year Research-status Report
成熟住宅地の持続的発展に向けた環境整備に関する地理学的研究
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24520887
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
香川 貴志 京都教育大学, 教育学部, 教授 (70214252)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 成熟住宅地 / 持続的発展 / 少子高齢社会 / アクセシビリティ / バリアフリー |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、フィールド調査として千里ニュータウンにおける居住意識と住宅構造に関する補足調査を継続的に行った。この成果は2冊の単行本に収録された論文にまとめた。 海外フィールドについては、バンクーバーで郊外住宅地の開発に対応した中心都市の成熟住宅地の変容に関する予備調査(6月)と本調査(平成27年3月)を実施した。現地では研究協力者のエジントン教授(UBC)だけでなく、同氏と研究上の付き合いが深いペンデルトン教授(ランガラカレッジ)からも有益な助言を得ることができた。成果の一部は大学紀要(9月刊行)で公表した。平成27年3月の本調査では天候に恵まれず、若干の野外調査が残ったため、平成27年9月上旬)補足調査を実施する。 また、パースでは郊外の成熟住宅地の一つであるフリマントルの住宅地の現代的対応を調査した(9月)が、観光客が多く調査が予想外に難航し、パースでは止む無く都心周辺部のコンパクトシティ化にターゲットを変更して調査を遂行した。当地では当初の目標の達成が難しい状況にある。また、帰国の途中にトランジットを活用し、調査地の一つであるバンコクで途中降機し、現在集計・分析中の郊外住宅地トンソンホン地区の自治会代表者と成果報告会のプランについて話し合った。 一時期は日中関係の悪化により調査継続が困難となった上海では、別経費から旅費の一部を得ることができたこともあり、8月と11月の2度にわたってフィールド調査ができた。この調査結果の一部は秋季に東北地理学会で発表したが、まだ論文としては仕上がりをみていない。しかし、旧来の居住地域の商業化に関して新しい知見が得られており、調査研究は概ね成功している。上海の調査が難航した折に代替フィールドとして選定したロンドン郊外のレッチワースは予備調査の段階に留まっているが、将来につなげる展望を得ることも含めて平成27年9月に再訪を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内フィールドは予定以上の成果を得ており、国内外に情報発信ができている(一昨年度までの口頭発表と平成26年度の論文公表を実施)、研究の進行は極めて良好である。 他方、海外フィールドはバンクーバーと上海が概ね当初の予定通り、もしくは予定よりやや多い成果を得ている。 バンコクは少しだけ遅れ気味で、パースについては目的変更を余儀なくされたため軌道修正を図っている過程にある。レッチワースは、啓蒙雑誌である月刊「地理」において「地理の聖地を訪ねて」というシリーズでエッセーを発表し、相応の反応を得ることができた。また、現地で入手した英文書籍(都市地理学や都市計画学の古典的書籍のデジタル・リマスターの復刻版)の書評原稿を学術専門雑誌に掲載した。 上海の調査が動き始めたのでレッチワースでの調査研究は頓挫している状態にあるが、当初より本年度は将来に向けての補足調査を中心に考えていたため、成果については平成27年度末までに投稿は得られるよう努めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はこれまでに進めてきた調査で不十分な部分の補足調査を進め、資料が得られている部分については成果公表に向けての執筆作業が主体となる。本務との関係でまとまった調査日程を各研究対象地域で確保できないため、8月上旬に上海、8月下旬から9月上旬にかけてレッチワース、バンクーバーの調査を連続日程で実施し、出入国や準備に要する時間を節約する。海外調査を単なる地誌として終わらせないため、研究協力者のエジントン教授から助言を得たクライストチャーチで震災復興に関する調査を不足額の自己負担を覚悟してでも実施しておきたい。ここでも本研究の主題である成熟住宅地がキーワードとなる。当地は成果の社会還元を強く意識したフィールドである。必要に応じて、当地に詳しい佛教大学の植村善博教授にも研究への助力を仰ぐ。 学会での成果報告は、6月上旬に本研究の成果の主要部分として、上海の華東師範大学を会場に開催されるThe 3rd Conference on China Urban Developmentにおいて、少子高齢社会の下で顕在化しつつある、中国、日本、北米の都市問題を比較し、特に中国都市の問題点を指摘し、その解決方策を提案する予定である(招待のため渡航費と滞在費は先方負担)。国内では、秋季から明年3月(今年度末)にかけて数回を予定しているが、それと並行して成果公表に向けた論文執筆を進めることは言うまでもない。
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