2012 Fiscal Year Research-status Report
多様化するインド人ディアスポラのグローバルネットワークと場所の再構築
Project/Area Number |
24520888
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
澤 宗則 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (40235453)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
南埜 猛 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (20273815)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | エスニシティ / インド系移民 / グローバル化 / 脱領域化 / 再領域化 / インド |
Research Abstract |
エスニック集団が「自分たちの場所」を再構築する過程に関し、近代性に関する理論を援用して、在日インド人社会の空間がグローバル化のもとで再編成される過程を脱領域化と再領域化の概念を用いながら考察する。日本におけるインド人移民社会に関して、その位置付けと特色を明らかにした。 全国レベルでみた在日外国人の国籍別居住地・就業地分布,就業構造およびその変化に関して,法務省資料・国勢調査結果・集住地(東京都・神奈川県・千葉県・愛知県・大阪府・兵庫県)での自治体独自の統計を用いて,統計的分析を行うとともに、日本政府の在日外国人政策の変遷とその血統主義的特色を示した。 東京では現在言語集団ごとにいくつかのインド人コミュニティが立ち上がりつつある。その設立総会に参加したカルナータカ州出身者の行事などに引き続き参加(参与観察)するとともに、個人への詳細なライフヒストリーおよびメンタルマップの聞き取りを行う。また、以前より聞き取り調査を行っているインド人に対し、引き続き追跡調査を行った。 横浜では、インド資本の誘致が強力に行われ、その一環としてインド人学校が決定し、開校した。ここで行政主導によりどのようにインド人集住地が形成されるのか、あるいは形成されないのかに関し、集住地を成立させる条件について考察を行うとともに、コミュニティ成立の追跡調査を開始した。 神戸では、伝統的な宗教行事が行われ、あたかも出身地でのインド社会そのものの再現の感がある。しかし神戸生まれのインド人が多くなるにつれて、エスニシティの持つ意味はそのまま継承されるのではなく、常に新しい意味を再生産されながら現在意味のあるものは残り、そうでないものは消えてゆく。その創造的破壊のプロセスを歴史的に見てゆくことにより、インド社会から定住地でのインド社会へどのように発展・変化してゆくのかを分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
統計資料の収集やインド系移民社会の各地での聞き取りが進んでいるのとともに、理論構築も進んでおるため。
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Strategy for Future Research Activity |
グローバリゼーションのもとで空間が再編成されるなか、空間に関する理論も再構築をせまられている。グローバル化経済のもと、移民は人の移動のみならず資本・情報・モノ全てに大きく関わっている。本研究の目的は①商人・レストランオーナー・コック・IT技術者などインド人移民が多様化するなかで、同じ定住地に居住するインド人としての場所の再構築が行われている過程を明らかにすること。②学校・寺院・レストランなどが異国でのアイデンティティの再生産装置として、母国では交差しなかったネットワークが定住地の中で再構築される過程を明らかにすること。③移民社会に関する理論の再構築をギデンズの近代性理論を参照しつつ行うことである。 昨年度に聞き続き、グローバル化とインド系移民社会との関連性に関して、理論構築を進めていく。さらに、昨年度から開始されたインド系移民への聞き取り調査を続ける予定である。 特に、日本向けソフトウェアー作成(off-shore)およびインド人技術者の日本企業への人材派遣(on-site)を行っている企業での聞き取り調査を行う。IT技術者がどのように日本を就業地として選択し日本に派遣されるのか、そのプロセスを聞き取り調査する。 横浜市政におけるインド資本の誘致政策の動向とその成果について市役所とインド系進出IT企業への聞き取り調査を行う。 東京と横浜のインド人学校での聞き取りを行い、学校教育におけるナショナル・アイデンティティの形成プロセスを調査する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
在日インド人そのものに関する統計や情報をもとに、その社会の特色を明らかにするとともに、ローカルレベルにおけるコミュニティとの関係を考察する。対象とするのは主として東京・横浜と神戸のインド人社会である。 ローカルスケールにおける在日インド人の居住地・就業地分布,就業構造及びその変化に関して、インド大使館・領事館・インド人社会組織などの資料を用いて分析を行う。彼らの集住地区の形成と変化を把握し,セグリゲーションの要因を2つの市場,つまり労働市場と住宅市場,さらにサービス供給(消費財・教育・宗教)・社会組織の点から考察する(国内旅費使用)。 在日インド人の社会組織への聞き取り調査により、その形成のメカニズムとその変化を解明する。また在日インド人の個人史の聞き取り調査により、ネットワークの空間的広がりとアイデンティティとの関連を分析する(国内旅費使用)。 学会発表に関して、人文地理学会あるいは日本地理学会での発表を行う。また、英文の論文を人文地理に投稿する予定である。 (図書費・成果発表旅費・研究成果投稿料・論文別刷費使用)
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Research Products
(1 results)