2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24520891
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
作野 広和 島根大学, 教育学部, 准教授 (50284146)
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Keywords | 無住化集落 / 無住化危惧集落 / むらおさめ / 島根県 / 中山間地域 |
Research Abstract |
集落の無住化に至るプロセスを動態的に把握するために,無住化危惧集落を対象に実態調査を行った。具体的には平成24年度の研究によって抽出した無住化危惧集落から,複数の事例対象集落を選定し,ヒアリング調査を実施した。調査内容は居住者の属性,居住歴・職業歴,世帯の歴史,非同居家族の属性等を把握した。これらの調査により,農地・森林の管理実態を把握し,所有・管理形態に関する問題を整理抽出した。従来の研究ではこうした農地・森林所有管理の実態はほとんど把握されていない。この結果に基づき,地域住民が共同で管理することの重要性や地域内の住民が地域外からの協力者と協働することの必要性・可能性及びその実現のための条件を明らかにした。 さらに,無住化危惧集落に居住する住民に対して集落が消滅することに対する意識や,自分の代で家が断絶することに対する考えを聞き取った。多くの住民は集落維持には消極的な姿勢を示すものの,集落が存続していくことには期待感を有していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では居住者実態がなくなった無住化集落の分布を明らかにすることにより,どのような地理的条件の集落がどの時期に無住化していったのかを明らかにすることを最終的な目的としている。また,無住化の恐れがある集落の実態についても把握することで,集落が無住化していくプロセスを動態的に明らかにすることも意図している。さらに,無住化後も通い耕作などを通して集落は活用されている実態を鑑み,集落が本質的に消滅することに関する考察も行うことを目指している。 これら,一連の目的のうち,平成24年度は無住化集落・無住化危惧集落の分布と属性を明らかにした。そして,平成25年度は計画通り,事例対象集落を選定し,ヒアリング調査を実施することができた。ただし,事例対象集落は3集落を選定したものの,それらはいずれも同一地区内(島根県江津市川平町)を対象としたものである。本来ならば,属性の異なる複数の地区内にある集落を対象とすべきであったが,調査の準備が整わず,実現できなかった。 しかし,対象とした集落については多重的に調査を実施することができ,所期の目的を達成できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
無住化集落の住民等が管理する農地・森林の管理実態を調査し,集落の消滅や限界化がもたらす国土管理上の影響評価を行うとともに,農地・森林等を地域内外の人・組織が協働管理することの可能性とそのプロセスを明らかにする。また,限界集落化が水資源涵養機能や洪水防止機能等に与える影響評価と対策を明らかにする。 具体的には,平成24年度に抽出した無住化集落を対象としてフィールドワークを行い,農地や森林の管理実態を概括的に把握する。その上で,無住化集落の元住民等,関係者への連絡が可能な集落を複数ピックアップし,それらの集落に対しては詳しい調査を実施する。無住化集落関係者に対しては,農地や森林への通う回数,生産・管理の実態,土地や家屋に対する将来の見通しなどについてヒアリングを行う。また,当該無住化集落が位置する自治体に対してもヒアリングを行い,無住化集落へのアクセス道路や,電気・水道等のインフラ維持に対する見通しを明らかにする。 これらの調査を行うことにより,集落が無住化した場合の問題点を把握するとともに,やむを得ず無住化を迎える集落に対するターミナルケアのあり方についても議論する。このことは,申請者が提唱している「むらおさめ」の有効性について検証することとなる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度はほぼ予定通り使用したが,わずかな残額が発生した。残額はごくわずかであり,消耗品等の購入が年度内に行えなかったからである。 平成26年度における消耗品等の購入にあてる予定である。
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