2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24520894
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
杉浦 芳夫 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (00117714)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原山 道子 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 助教 (00117722)
石崎 研二 奈良女子大学, 研究院人文科学系, 教授 (10281239)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 中心地研究 / Christaller / 渡辺良雄 / 学説史 / 東北地方 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、主に渡辺が残した資料を整理し、渡辺所有のChristaller(1933)の原本に自身が記入した書き込みを精査した。段ボール箱3箱分に相当する関係資料が残されていたが、最初に目を惹いたものは、1950年代の東北地方の市町村別中心機能を把握するための資料として利用することができた何冊もの当時の電話帳である。最も貴重な資料は、折れ線グラフによって中心地の分類を行った福島県での研究で使用された事業所統計・商業統計細目業種別データを市町村別に筆写したものである。複写機などのない当時のこと、分量から見て筆写にかなりの時間を要したものと考えられ、そのデータ分析も多くの時間を使って緻密に行なわれたであろうことが想像される。大雑把な資料整理を終えたばかりであり、論文執筆の経緯などに絡めての詳細な検討作業は今後の課題である。渡辺の押印のあるChristaller(1933)の原本は初版本で、日本では初版本を当時購入していた人・研究機関は多くなかったはずである。多くの書き込みがある個所は、序論から供給原理に従う中心地システムの図とその特徴をまとめた表が載っている原本72ページあたりまでである。それは、渡辺が、Christallerの研究目的と中心地理論の根幹(静態的関係の部分)について十分に読み込んでいたことを裏づけるものといえる。原本73ページ以降には書き込みは殆ど見られないが、139~140ページの中心機能施設を列挙した個所にはそれぞれの和訳が記され、(自身の実証研究を念頭に置いてのことか)中心機能の理解を深めようとしていた様子が窺える。資料整理の過程での一つの発見は、『宮城県史』の商業に関する部分を担当し、実質的に宮城県を対象とした中心地研究を行なっていたことが判明した点である。3年間の研究を通し、渡辺の中心地研究が緻密なデータ分析に基づいて行なわれたことが確認されたといえる。
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