2013 Fiscal Year Research-status Report
石干見の文化資源としての位置づけとそれをめぐる国際的研究ネットワークの構築
Project/Area Number |
24520902
|
Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
田和 正孝 関西学院大学, 文学部, 教授 (30217210)
|
Keywords | 石干見 / 還元 / ネットワークづくり / 知識の共有 |
Research Abstract |
本年の研究では、石干見に関わる地域の人々が、石干見自体を、生活・生業に関する歴史遺産・文化財として保存したいとする考え方や、海を持続的に利用し、管理するためのいわば環境保護のシンボルとしたいとする考え方、町おこし・地域おこしの「素材」として利用したいとする考え方など様々な意思を有して保全にあたっていることが明らかとなってきた。このような状況について丹念に記録する作業が、研究者の側に求められるのである。 本年度は、上記の視点に立って、石干見の研究で得た諸成果を地域にどのように還元すればよいのかを考察しながら、フィールド調査を継続した。調査は、長崎県島原市、諫早市を中心に有明海周辺、海外では台湾北部の淡水および北西部の苗栗県後龍鎮において実施した。長崎県では島原市で結成されている「みんなでスクイを造ろう会」と複数回にわたって情報交換した。台湾では主として後龍鎮の外埔里に残る2基の石滬を保全し活用しようとする住民主体の組織づくりについて聞き取り調査を実施した。 石干見にゆかりのある地域間のネットワークづくりとして、ブックレットを発行することができたのは大きな成果である。地域の行政や文化財保存団体、一般市民間の人的ネットワークの構築は、それぞれの地域または複数の地域にゆだねなければならないが、石干見を研究する者は、これらの諸団体、人々が共有できる知識を提供することによって地域の紐帯となりうると考える。こうした諸団体や人々と互いに関係しながら何を求めればよいのか、検討する必要がある。今後とも地域との十分な情報交換と議論を続けなければならない。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していた地域調査のうち、長崎県および台湾北西部において現地調査を実施することができた。また、地域に対して地理学的な「知」を還元し、さらには地理学者がいかに地域貢献できるかを考えることを念頭に、論文および編著を合計3編執筆することができた。これらの論文・著書の発表は、年度内の計画のうち「中間報告」の作成に該当するものである。以上の達成をふまえて、本年度の研究は「おおむね順調に進展している」と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
石干見を保全・活用する各地の団体との情報交換を通じて、地理学的「知」の還元について考える。とくに活用するためにどのような活動やイベントを実施しているのか、活動を観察することも視野に入れながら考察を深めたい。海外調査はフランスを予定している。大西洋岸のレ島、オレロン島での石干見保全と再生、活用に関する行動と内容を、現地の保存会との情報交換を通じて考察したい。 また、新たな課題のひとつとして、かつて石干見で漁獲された魚の販売について考えてみることがある。石干見を通じて形成されたかつての地域ネットワークや水産物流通システムについても、記録を掘り起こす作業を進めたい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
購入した書籍の代金が予定していた金額より安価であったため、若干の残額が生じることになった。 残金は次年度の書籍購入費に充当したい。
|