2014 Fiscal Year Annual Research Report
ルーマニア・エスノポップを創発する音楽文化資源の研究
Project/Area Number |
24520904
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
諏訪 淳一郎 弘前大学, 国際教育センター, 准教授 (40336904)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ロマ / 音楽 / 少数民族 / 文化資源 / 身体 / 学習過程 / ルーマニア / エスノポップ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、8月と3月の2回に分けて引き続いてジュルジュ市とその周辺地域におけるロマのコミュニティにおける音楽活動を調査した。フラテシュティ村ではかつて40名ほどの音楽家が在籍し彼らが住む場所は「音楽家通り」とも呼ばれていた。しかし、音楽の嗜好の変化およびヨーロッパ域内での様々な出稼ぎ労働の可能性によって、現役の音楽家はいなくなっていた。この例のように、ルーマニア・エスノポップの音楽文化資源としてのムジカ・ラウタレアスカは、直接的な役割を終えつつあるかにみえる。同じく平成26年度の調査では、ジュルジュ芸術学校の音楽家がエスノポップ「マネレ」専門のコースを開講し、音楽学習の資源としての役割が薄れつつある親族組織を補完する役割を果たしつつあった。 このように、調査期間全体を通じて、ムジカ・ラウタレアスカ(以下ML)の音楽文化資源としての特性は以下のようであることが分かった。①MLはエスノポップ「マネレ」と同一の演奏者によって培われているケースがきわめて多く、また使用される楽器の編成も大きく変わっていない。やはりMLの習熟はマネレへの感性を養っている。こうした感性のありかは観客とのまなざしの中に培われているという点において、両者にとって極めて重要で根源的なものである。②2010年代ではマネレ自体が変質しつつあり、よりエスノポップの色彩の濃い2000年代のスタイルが「古いマネレ」(マネレ・ヴェケ)と呼ばれMLとエスノポップの懸け橋としての役割を果たしている。③地方の村落社会においてはMLの担い手は高齢化しており、若い世代で音楽を志すものは減少しつつある。このため、音楽文化資源としてのMLの伝承は、今後はNPOなどによる学校教育などと連動した少数民族のエンパワメントとなるであろうことの萌芽的な試みが見られる。
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Research Products
(1 results)