2012 Fiscal Year Research-status Report
現代中国社会の変容とその研究視座の変遷―宗族を通した検証
Project/Area Number |
24520907
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
瀬川 昌久 東北大学, 東北アジア研究センター, 教授 (00187832)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川口 幸大 東北大学, 文学研究科, 准教授 (60455235)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 現代中国 / 宗族 / 文化人類学 / 伝統文化の復興 / 文化資源 / 研究史 / 社会変化 / 持続 |
Research Abstract |
本年度は、分担者と共に、国内居住の主要な宗族研究者の参加を求めて、研究会を3回実施した。研究対象としての宗族の変化と、研究者の側のパラダイム・シフトをともに対象化することにより、伝統文化の持続性という普遍的な問題について考察し、今後の文化人類学的な中国社会研究のあるべき方向性を展望することを目指す観点から、これらの研究会を通じ、宗族研究史について総括し参加者の間で共有することを試みた。その要点は、20世紀前半の欧米や中国、日本の研究者たちは、宗族の発達や「家族主義」を中国社会の重要な「本質」の一部として理解しようとする傾向が顕著であったこと、次いで1960~70年代を中心に宗族研究の一大パラダイムを形成した英国の社会人類学者M・Freedmanの視点では、過去の地域社会の具体的な諸条件からその生成や変成を説明しようとする地域史的なアプローチが主流になったこと、そして1990年代以降の中国社会自体の変化により中国各地で宗族組織が復活または創出されるようになると、従来とは異なる視座での宗族研究が主流の座を占めることとなり、現代社会の文脈の中で文化的・歴史的アイデンティティーの表象や観光資源化に結びついて形成される宗族の姿に着目する構築主義的な視座が顕著となったこと、以上である。また、参加者各自の現地調査経験について発表を行い、宗族の復興現象は地域的にも非常に大きな差異が見られ、福建省南部や広東省のようにそれが盛んな地域もあれば、華中地域や中国東北部などそれとは無縁な地域もあることを確認した。そして、その背景を具体的に分析してゆくことは、「伝統の創造」や「文化の客体化」と呼ばれる現象が生じる際に、個々の地域社会内部で意識的になされる選択の過程や、無意識裡に制限的に作用している諸条件を解明することにつながるという認識で一致した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究会を当初の計画の2回を上回る3回実施した。それを通じて、代表者、分担者、研究協力者の間でのこれまでの現地調査経験ならびに資料蓄積についての情報共有がスムーズにでき、最終的な目標である研究成果のとりまとめ(論文集の刊行)に向けて具体的なスケジュールおよび各執筆者の役割分担についての大枠での合意を形成するに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
中国諸地域における宗族復興を促進・阻害している諸要因を、各地域社会の文脈に即して具体的に分析してゆくため、代表者、分担者、研究協力者の間で所定の役割分担にしたがって研究発表を行い、討論を行う。このための研究会を、6月1日~2日に東北大学東京分室で開催する予定となっている。 また、研究成果論文集の執筆を、各自の分担テーマにそって行い、9月までに取りそろえる手はずとなっており、その完成原稿をもとに次年度科研費の出版助成に申請する予定である。また、これらの研究報告原稿についての相互評価と討論のための研究会を、9月以降東北大学において開催する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2回の研究会実施のために研究会の会場使用料および参加者の旅費の支出を必要とする。会場使用料は東北大学東京分室25,000円、旅費は打ち切り込みで275,000円(神戸-東京1泊×1、京都-東京1泊×1、鹿児島-東京1泊×1、静岡-東京0泊×1、仙台-東京0泊×2、神戸-仙台1泊×1、京都-仙台1泊×1、鹿児島-仙台1泊×1、静岡-仙台1泊×1、東京-仙台0泊×2)。
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Research Products
(1 results)