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2013 Fiscal Year Research-status Report

震災後の東北における地域再編と結婚移民女性の社会参画に関する文化人類学的考察

Research Project

Project/Area Number 24520908
Research InstitutionTohoku University

Principal Investigator

李 善姫  東北大学, 東北アジア研究センター, 専門研究員 (30546627)

Keywords結婚移民女性 / 共生 / 東日本大震災 / ジェンダー
Research Abstract

本研究は、東日本大震災以降、東北の地域再編の中で、結婚移民女性達の生活がどのように変化し、地域社会に参画していくのかを考察することで、結婚移民女性のエンパワーメントの可能性と地域の中での新たな共生の可能性を同時に提示することを目的とする。
東日本大震災の被災地域となった宮城、岩手、福島には、結婚をきっかけに移住をした、いわば、「結婚移民女性」が多数存在する。彼女らの多くは、家庭内存在として不可視化されたまま生きてきた。周囲の同化圧力に加え、ホスト社会で生きるための十分な社会資本を身に着ける機会もないまま、コミュニティの家事、育児、介護などのジェンダー役割を担ってきたのである。ところが、東日本大震災をきっかけに、東北の結婚移民女性の存在が可視化され始めている。被災地に、外部からの支援者たちが往来すると、被災した外国人の存在も注目されるようになり、震災によって職を失った移住女性たちに就労支援などの支援の動きが始まった。また、このような結婚移民女性に対する支援の手が広がることにつれ、結婚移民女性たちの方からも同国出身者の自助グループが結成されるなど、これまでにない動きが広がっている。
本研究は、これらの動きを文化人類学的方法で参与観察し、東北の被災地の事例を通して、「共生」の可能性を提示することを試みている。そのため、研究初年度には宮城県石巻市で、2013年度には気仙沼でアンケート調査と聞き取り調査を行った。また、岩手県の大船渡と福島でも聞き取り調査を行っている。これらの調査内容については、すでに調査報告書を発行している他(両方とも外国人被災者支援センター発行)、2013年には『復興を取り戻す―発信する東北の女たち』(萩原久美子、皆川満寿美、大沢真理編、岩波書店、2013年)でその一部を発表した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

2012年度と13年度においては、宮城県の石巻と気仙沼を中心に、移住者を対象にしたアンケートを実施した。アンケート調査では、移住者の生活状況や社会参画状況が、震災前後でどのように変わったのかを量的に示すことができた。調査結果の一つとしては、結婚移住者たちによる、日本語教室や外国人向けの地域社会の行事への参加率は低い反面、地域のお祭りや子どもの学校行事には参加頻度が高いことがわかった。また、いずれの調査でも結婚移民女性の日本語力には問題があり、その日本語力の低さが社会参画の障害となっていることが明らかになった。
他方で、聞き取り調査も持続的に行っている。これまで、のべ50人あまりの人々に聞き取り調査を行った。いずれの調査も、調査対象者に調査の意図を説明し、同意を得たうえで行っている。本調査を通して、さまざまな立場や状況の中で、個々人の結婚移民女性が抱えている社会的悩みや可能性を探ることができた。そこには、多様な個々人のライフ状況に加え、社会的ジェンダー差や外国人であるというダブルの壁が存在していることも明らかにしてきた。ただ、被災地の復興が進むにつれ、地域社会の状況や家族内の関係は日々変化している。引き続き、追跡の調査を加えながら、被災地の地域再生と結婚移民女性の参画状況を追っていく必要がある。それに加え、今後は、アンケート調査と聞き取り調査をより丁寧に整理・分析した上で、結婚移住者と東北の地域社会を題材とする学術論文を発表する予定である。

Strategy for Future Research Activity

引き続き、被災地の結婚移民女性の生活や活動を追いながら参与観察の方法で調査を進めていくつもりである。被災地では、震災3年を迎え、外部からの支援の手が弱まっている傾向がある。これまで外部組織とのかかわりによって、大きく自分たちのグループを育ててきた結婚移民女性達の今後が気になるところである。これまでと同様、各地域の移民者グループの動向を追っていく一方で、移民グループから外れている個々人の聞き取り調査も行いながら、被災地における「共生する地域社会」の創生のための提言を行っていきたいと考えている。なお、調査は引き続き、調査対象者の同意の上で行う。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

2013年度のアンケート調査は、民間の被災地支援組織との共同研究で行われ、事実上、アンケート調査に必要な経費は民間団体から支払われた。また、大船渡調査や福島調査については、一般社団法人生活経済政策研究所の共同研究者となっており、調査費を補助してもらった。それらの理由により、当初予定していた研究費用をだいぶ節約することができた。
研究計画作成時には予定していなかったが、今後海外調査をいれる予定である。海外調査の対象としては、台湾と韓国を考えている。地震や台風などで災害が多い台湾は、日本と同じくアジアからの結婚移民女性が多く生活している。災害後の復興には、移住女性の参加も積極的に推進したという報告もあり、台湾の経験を日本と対比しながら調査したいと考えている。同じく結婚移民者が多い韓国では、災害に備えて結婚移民女性達にどのような対策を作っているのか調べるつもりである。いずれの調査も、調査対象者の同意の上で行う。

  • Research Products

    (4 results)

All 2013 Other

All Presentation (2 results) Book (2 results)

  • [Presentation] Reconsidering Communities and the Mobility of Marriage Migrant Women in Rural Areas of Japan

    • Author(s)
      Lee Sunhee
    • Organizer
      IUAES2014(世界人類学会)
    • Place of Presentation
      千葉
  • [Presentation] Mobility of Chinese and Korean Marriage Migrants in Japan Rural Areas

    • Author(s)
      SHAUHANJUNA、Lee Sunhee
    • Organizer
      ISA2014(世界社会学会)
    • Place of Presentation
      横浜
  • [Book] 復興を取り戻す―発信する東北の女たち2013

    • Author(s)
      萩原久美子、皆川満寿美、大沢真理
    • Total Pages
      147(30-42)
    • Publisher
      岩波書店
  • [Book] 人の移動辞典―日本からアジアへ・アジアから日本へ2013

    • Author(s)
      吉原和男、蘭信三、伊豫谷登士翁、塩原良和、関根政美、山下晋司、吉原直樹
    • Total Pages
      528(318-319)
    • Publisher
      丸善

URL: 

Published: 2015-05-28  

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