2013 Fiscal Year Research-status Report
バリ=ヒンドゥー教徒の社会における「空間の圧縮」とその帰結
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24520910
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
中村 潔 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (60217841)
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Keywords | バリ / ヒンドゥー / 移住 / 共同体 / インドネシア / ロンボク |
Research Abstract |
初年度の調査で得られた資料から、慣習村に含まれるバンジャール・パトゥス(互助組織)に所属しつつデンパサール市で職を得て移住している人々が、慣習村で現在行われている大規模な共同的な行事(村の寺院・社の修築儀礼)にどのように関わるか、そして、マタラム市在住のスラット郡の慣習村出身者による共同組織がどのようなものか、組織の構成、規則、会合などについてインフォーマントに聴き取り調査をすることを本年度の現地調査では目指した。 カランガスム県スラット郡の慣習村では、慣習村寺院の修築儀礼 (ngenteg linggih nubung daging)の準備が行なわれていた。本儀礼は10月から12月にかけて遂行されるが、その準備の儀礼がおよそ半年前から行われていた。1. ngaku agem karya (4/16), 2. nuasen karya, ngeruak, nanceb wewangunan など(6/23), 3. molong sunari (8/18), 4. melaspas pesucian (8/21), 5. nunas panca tirta (8/22)である。これに続く、準備儀礼である mendak isepan が調査期間中(9月15日)に行なわれたので、これに参加した。 慣習村成員とは、(修築儀礼が行われる)慣習村寺院の信徒であり、慣習村から都市に移住した者も、慣習村への帰属を続けている以上これに何らかのかかわりを持たざるをえない。慣習村では(移住者が所属し続けている)バンジャールを通じて、慣習村への寄付を求めている他、移住者もそれぞれの事情に応じて実際に儀礼の準備に関わっている。 ヌサ・テンガラ・バラット 州の州都マタラム市では、移住後も慣習村儀礼や慣習村の活動に深く関わっている者(一般に知識人層)へのインタビュー調査を行ない、移住者たちによって作られた組織について資料を集めた。マタラム市スラパラン区、北モンジョク村では、KAUH (Keluarga Arisan Umat Hindu ヒンドゥー教信者講組織)がヒンドゥー教徒のバリ人(移住者)によって設立されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2013年度より本務(研究科)の教務関係業務を承り、予定していた長期調査の遂行は不可能となり、そのため予定の60日を大幅に削減した調査日程で行なわざるをえなかった。この研究計画では、バリ州カランガスム県、バリ州デンパサール市、NTB州マタラム市と遠距離にある複数の調査地でのインタビューが本来は必要なのだが、短期間の日程では、インフォーマントとのスケジュール調整が非常に難しかく、今回の調査ではデンパサール市のインフォーマントとはSMSでやりとりができただけで、結局、インタビューの時間はとれなかった。 この状況は2014年度も改善できる見込みはなく、2015年度前半に集中的に長期の調査を予定せざるをえないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の方法については当初の研究計画通りであるが、今年度も学務上の業務の必要から大学を長期に離れることが非常に困難なため研究の推進計画に若干の変更を加える。当初計画ではバリ州カランガスム県、バリ州デンパサール市、ヌサ・テンガラ・バラット州マタラム市の3箇所を予定していた現地調査を、今年度はマタラム市を中心に行うこととする。マタラムへの移住者が作った講組織についてより詳しく調べ、彼らと出身慣習村との関係(出身慣習村の儀礼への参加の仕方)および出身村との個人的な紐帯(親族関係、老親の介護や屋敷寺の維持について)を調べる。 また、調査終了時には、本調査の暫定的な結果を調査対象者に示し、対象者自身の調査結果に対する意見を聴く機会を設け、インタビュー調査の会話を録音し資料としたもの(録音された会話及びそのトランスクリプション)にもとづき、調査対象者とさらに話し合い、費調査者自身の現状の解釈を求める。 学務上役職の任期が2014年度までであるので、補充調査と成果発表を計画していた最終年度(2015年度)には、現地調査を長期に(あるいは複数回)行なうことにして、デンパサール市への移住者への調査を最終年度前半に集中して行なう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
調査日数を短縮する必要が生じたため、当初計画通りの使用ができず、きわめて少額の剰余金が生じた。少額のため、適切な物品の購入に使用することが不可能であった。 少額であるので2014年度以降の研究で消化する。
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