2014 Fiscal Year Annual Research Report
現代インドにおける都市村落混住地域とグローカルネットワーク-社会空間の視点から
Project/Area Number |
24520911
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
常田 夕美子 大阪大学, グローバルコラボレーションセンター, 特任准教授 (30452444)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | インド / グローバリゼーション / ラーバン / 社会変化 / 親密ネットワーク / ケア / 女性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、現代インドにおいて急激に増えている「都市村落混住地域」(rurban、以下ラーバン)において、都市的な自律的モビリティと村落的な共同態的関係を接合した、新たな社会実践と空間構成のパターンがつくられる過程を明らかにした。 調査研究を通じて明らかになったのは、ラーバンでは、従来の村落部におけるような男系親族集団やそれにもとづく家屋や土地の相続という原則、そして、それに応じて息子世帯が親と同居して老後の面倒を見るという形態は失われつつあることである。都市部に移住した若年世代が日常的には独立した別個の世帯として暮らしているのに対して、ラーバンにおいては、男系の原則や、さらには血縁関係自体にとらわれない新たなケアの関係が構築されていることが確認された。 ラーバンにおける新たなケア関係においては、息子ではなく娘が両親の世話をすることが多々みられる。例えば、現在女性の雇用機会が増えているなか、女性が夫や家族・親族を説得し、ローンも夫と一緒に組みながらラーバン内の自分の両親宅の近くに家を建てるケースである。さらに注目すべきは、階層を超えたケア関係の構築である。ラーバンの中間層退職者たちは子供たちの世話にはなりたくないと主張し、都市で働いている息子たちが彼らを呼び寄せようと思ってもそれに応じないケースがよくみられる。そのかわり、近所に住む貧困者(未亡人や「出戻り」などを含む)を家事労働者として雇いながら、互いが家族のようにふるまっているケースがままみられる。そこでは、社会的弱者を含む相互的な新たなケアの関係が作られている。今後の課題は、そのような新たなケアの関係や親密ネットワークが、いかに現代インドにおける新しい価値観や社会的実践の原動力になっているかを調査研究することである。
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