2014 Fiscal Year Research-status Report
現代インドの贈与と異人歓待に関する人類学的調査研究:受容と排除の分水嶺からの考察
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24520916
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Research Institution | Gunma Prefectural Women's University |
Principal Investigator |
國弘 暁子 群馬県立女子大学, 文学部, 准教授 (20434392)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ジェンダー / 異人 / 贈与 / 秩序 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、西洋の研究者たちによって作り上げられた南アジアのダーナ(贈与)に関する研究蓄積の再検討を行い、その上で、西洋的な思想も踏まえて、アジアの側からダーナ研究に関する学術的貢献を果たすことを目的としている。その具体的な策として、ヒンドゥー女神寺院において、異人として存在するヒジュラに対して巡礼者が行う贈与の意義について考察する。ヒジュラとは、ジェンダー研究においてセクシュアル・マイノリティーの座を与えられてきた人々のことであり、贈与を受け取る立場にあることはこれまで看過されてきた。 本研究の3年目では、現地調査を8月にフランスにおいて、3月にはインドで実施した。まず、フランスで実施した調査の目的だが、今日の西洋社会において、ジェンダー規範に抗した生き方がどのように受け入れられているのかを把握することにあった。ヨーロッパにおけるトランス・ジェンダーの歴史や現状について文献を収集し、そして、フランス国ブルターニュ地方において、性別変更した(変更する意思のある)人々へのインタビューを実施した。3月のインド、グジャラート州での調査は、ヒジュラという異人が受け入れられる習俗についての考察を深めるためることを目的に、グジャラートの一般家庭において、帰属を異にする人々を己の家に入れる場合の作法についての参与観察を行った。具体的には、共働きの中流家庭において、下流に属する人々を労働者として雇い入れる場合に、彼らと同じ空間を共有する上での秩序づけをどのように行っているのか、また、賃金の受け渡し以外に、物をあげる・もらうという行為をどのような場面で行い、それをどのように認識しているのかについての観察を行った。 研究成果の発表としては、日本文化人類学会共催の国際学会において自ら企画したパネルにおいて論文を発表し、また、昨年度の国際ワークショップで発表した原稿を欧文雑誌に投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地調査を継続する傍ら、国際学会やワークショップの場において研究成果の発表を行い、さらに、その発表原稿をもとにした論文を欧文雑誌に投稿することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
国際学会での研究成果発表の経験をもとにして、今後は国内における研究成果の発表に力を入れる。そして、これまでの研究成果を新たな研究として発展させるための見通しについても検討を始める。自身の研究成果は、ジェンダー研究における位置付けは明確にできていると考えるが、今後は、ジェンダー研究以外、たとえば、宗教研究や移民研究に対する貢献としていかに展開することが可能かを検討する。
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Causes of Carryover |
海外渡航のための航空券が、当初考えていた額よりも安く購入することができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
図書購入費にあてる予定。
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