2013 Fiscal Year Research-status Report
南ラオスの農村開発とその社会・文化的整合性に関する人類学的研究
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24520918
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Research Institution | Kobe City University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
中田 友子 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (50508398)
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Keywords | 開発 / プランテーション / 南ラオス / 文化変化 |
Research Abstract |
前年度からの継続調査を行った。ただし、今年度はラオス国立大学社会学部との研究協力に関する契約を更新する必要があったため、これまでの研究結果等を報告し、その他必要書類を提出したうえで、調査許可を得るべく2013年に入り早々に交渉を開始した。ところが、ラオスの国内事情などにより調査許可がなかなか下りず、9月に直接ラオス国立大学へ赴き、調査の目的や方法などについて説明を行った。その結果、なんとか調査許可を得ることができ、12月と2014年1月末から2月にかけてそれぞれフィールドワークを行うことができた。 12月の調査は前回の調査から1年経過していたため、前回と比べかなりの変化を確認した。世帯を個別に訪問しインタビューした結果、特にゴム会社の労働者たちの待遇が明らかに悪化しており、それにもかかわらず多くの労働者たちは不満を抱きながらも他に有力な収入源がないために、働き続けなければならない状態であることが明らかとなった。 1月末から2月にかけての調査では、これまで一度も観察したことのなかった寺の祭り(一種の収穫儀礼)を調査し、また12月の調査で聞き取りができなかった世帯にもインタビューを行った。ゴム・プランテーションにおけるインセンティブの廃止や労働強化など、明らかな待遇と労働条件の悪化がみられる一方、一部の労働者の側にこれに慣れつつあるという様子も見られた。そのため、離職者は少なくないが、新たに就労する住民も多く、全体的にはプランテーション労働が地域に定着しつつあるという印象をもった。ただし、これはあくまでも現状においてであり、今後さらなるラテックス(ゴム樹液)買い取り価格の低下や労働強化が進めば、状況が一変する可能性は否定できない。 なお、今年度は2012年度までの調査をもとに、「神戸外大論叢」に論文を1本発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、調査許可が下りるかどうか心配したものの、なんとか下り、最初に予定した9月には間に合わなかったが、12月と1~2月にそれぞれ調査を実施することができた。いったん調査地に入れば、これまでの経験や住民たちとの間で築いた長年のラポールなどもあり、特に問題なくデータ収集ができる。ただ、過去に行ったインタビューのテープ起こしが、一部を除いてなかなか進んでおらず、結局、現在までその分のデータ整理が行えていないのが気がかりである。この点を除けば、現在までのところはおおむね順調だといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も調査は9月上旬から中旬にかけてと3月初旬の計2回実施する予定である。9月は雨期の真っ最中であり、3月はおそらくゴム・プランテーションの休業期間の最後か、あるいはこれが終わった直後にあたるだろうと考えられる。これまでと同様に労働者や村人たちの動向や語りなどを中心にデータを収集するとともに、できればゴム会社の幹部や郡の職員らにもインタビューを行い、これまでの経緯に対する彼らの見方や今後の方針などについて聞き取りをしたい。これまで、調査へ行くたびに状況が変化しており、今後もそれは変わらないだろうと予想される。本研究の目的の一つは変化のプロセスを追うことであるため、この点について見逃すことなくデータを収集したい。特に、経済的な変化は文化変化と直結しているという感を強くしているため、その点は特に注目したい。2月初旬に行われた寺の祭りはこれまで見たことのない盛大なものであった。村としても大きな出費を行っていたことは間違いなく、これがゴム・プランテーション開発と直接的に結びつくかどうかはともかく、現在、当該村が大きな経済、社会、文化的システムにより強固な形で包摂されつつあることも確実だと思われる。こういった点にも目配りをしつつ、開発と文化との関係について考えていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
理由は二つ挙げられる。一つは、当初、今年度にフィールドワークへもっていくモバイルパソコンを購入する予定でその分の予算を計上をしていたが、機種の選定に手間取り、購入することができなかった。二つめの理由は、前年度から日本在住のラオス人留学生に依頼しているテープ起こしが終わっておらず、その謝金の支払いが完了していないことである。 次年度にモバイルパソコンを購入し、またテープ起こしを完了してもらうことで確実に使用する計画である。
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