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2012 Fiscal Year Research-status Report

東北地方における民俗の展開と東日本大震災

Research Project

Project/Area Number 24520919
Research Category

Grant-in-Aid for Scientific Research (C)

Research InstitutionTohoku Gakuin University

Principal Investigator

政岡 伸洋  東北学院大学, 文学部, 教授 (60352085)

Project Period (FY) 2012-04-01 – 2015-03-31
Keywords東日本大震災 / 復興政策 / 生活再建 / 民俗行事の復活 / 民俗の資源化
Research Abstract

本年度は、災害と民俗に関する文献資料の収集を行うとともに、①東日本大震災の被災地である宮城県本吉郡南三陸町戸倉波伝谷地区および同県東松島市大曲浜地区での民俗調査の実施とその分析、②岩手県盛岡市盛岡八幡宮例大祭の映像記録化、③神戸市長田区および灘区、淡路市旧北淡町における阪神淡路大震災被災地での巡検調査を実施した。
その中でも、今年度得られた大きな成果として、東日本大震災からの被災地の2年の動きに対する理解が深まった点があげられる。まず、暮らしの再建に向けた2年というのは、災害および復興政策による混乱と、それへの対応に費やされた期間であったこと、特に復興政策については、これまでの生業のあり方に転換を迫るものであり、震災後の不安定な状況の中で、従来とは全く異なる方法を強いられたという点において、被災地・被災者にとって大きな負担となった点が指摘できる。震災直後に比べ、最近では落ち着いたような感もあるが、実際には復興政策下における混乱が落ち着いただけであって、高台移転等がこれからであることを考えると、まだ新たな暮らしのスタートを切るための準備段階でしかないことは押さえておく必要があるように思われた。
また、震災直後、祭りや民俗芸能が次々と再開され、マスコミ等でも大きく取り上げられたが、戸倉波伝谷地区の場合、災害と復興政策による混乱の下、地域がバラバラになりそうになる中で、震災前より人びとをつなぐ機会でもあった春祈祷を、また大曲浜地区では獅子舞を再開するという情報をマスコミに取り上げてもらうことで、連絡も取れないバラバラになった人びとを集める機会として活用していたことが明らかとなった。つまり、被災地それぞれのニーズに合わせて民俗が活用されていたのであり、その点では震災以前のものが復活したというより、震災後の混乱期の現象として理解すべきものであったのである。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本研究は、東日本大震災の被災地で起こりつつあるさまざまな現象を、現地調査に基づく具体的な資料をもとに検討し、民俗学の立場からいかに理解すべきかを考えることを目的としているが、宮城県本吉郡南三陸町戸倉波伝谷地区においては、生業、社会組織、年中行事、祭り等を中心に、震災後2年間の動きについての詳細な調査データーを集めることができ、これに基づく分析についても、政岡伸洋「震災後の暮らしの再建過程と民俗学の課題―宮城県南三陸沿岸の一村落の事例から―」(日本民俗学会第64回年会、2012)および、同「被災地における民俗行事の復活とその背景を考える」(佛教大学開学100周年記念『ありがとうプロジェクト』歴史学部講演会「民俗文化財の保存と継承をめぐる諸問題、2012)、同「民俗行事の復活とは何だったのか―宮城県本吉郡南三陸町戸倉波伝谷の春祈祷の場合―」(国立民族学博物館共同研究「災害復興における在来知―無形文化の再生と記憶の継承―」第4回研究会、2013)といった学会発表や講演のほか、執筆業績としても政岡伸洋「なぜ民俗行事は復活したのか―その活用に向けて―」(『復興ツーリズム―観光学からのメッセージ』同文舘出版、2013)を発表することができた点は、当初の計画以上に進展している。また、阪神淡路大震災被災地の巡検調査においても、従来の研究では見落とされてきた課題がみえてきた。
一方、被災地での動きは非常に早く、調査も頻繁に行う必要があることから、そちらに時間をかける必要もあり、本研究のもう一つの軸である岩手県盛岡市盛岡八幡宮例大祭については映像記録化はできたものの、聞き書きや史料調査等が想定していたよりも若干遅れ気味であると考えている。
しかし、その点を踏まえても、本研究を進めていくための基本的な調査データーの収集は進んでおり、総合的に見ておおむね順調に進展しているものと判断している。

Strategy for Future Research Activity

昨年度の研究実績としてはおおむね順調に進展していると判断したが、被災地の動きはめまぐるしく変化しており、宮城県本吉郡南三陸町戸倉波伝谷地区では、今後、高台移転等も予定されていることから、引き続き地域の暮らしの再建に向けた動きを、聞き書きおよび行事等の参与観察によって、映像も含め記録化していく。一方、岩手県盛岡市盛岡八幡宮例大祭については、聞き書きや参与観察による映像の記録化を進めるとともに、飢饉や津波被害の影響にも注意しながら史料調査も行う予定である。
また、宮城県東松島市大曲浜地区での調査も引き続き行うとともに、東日本大震災被災地での動きの地域性の問題も視野に入れつつ、その比較検討のため、新たな課題の見えた阪神淡路大震災被災地での調査および同じ津波災害の常習地である和歌山県や、津波伝承に関する民俗研究で知られる沖縄県等での巡検や資料収集も実施したい。
この他、中間報告として、日本民俗学会や日本文化人類学会、東北民俗の会等の関連学会での報告、専門的知識を持つ研究者を招いての研究会の開催も行い、本研究の今後の課題を明確化できればと考えている。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

該当なし

  • Research Products

    (6 results)

All 2013 2012

All Presentation (5 results) (of which Invited: 1 results) Book (1 results)

  • [Presentation] 復興の名の下で何が起こっているのか―宮城県本吉郡南三陸町戸倉波伝谷地区の場合―2013

    • Author(s)
      政岡 伸洋
    • Organizer
      日本文化人類学会第47回研究大会
    • Place of Presentation
      慶応大学
    • Year and Date
      20130608-20130608
  • [Presentation] 民俗芸能と祭礼からみた地域復興―東日本大震災に伴う被災した無形の民俗文化財調査から2013

    • Author(s)
      高倉浩樹・岡田浩樹・木村敏明・菊地暁・沼田愛・小谷竜介・政岡伸洋・菊池健策・齋藤三郎・沼倉雅毅
    • Organizer
      東北大学東北アジア研究センターシンポジウム
    • Place of Presentation
      東北大学
    • Year and Date
      20130223-20130223
  • [Presentation] 民俗行事の復活とは何だったのか―宮城県本吉郡南三陸町戸倉波伝谷の春祈祷の場合―2013

    • Author(s)
      政岡 伸洋
    • Organizer
      国立民族学博物館共同研究「災害復興における在来知―無形文化の再生と記憶の継承―」第4回研究会
    • Place of Presentation
      東北学院大学
    • Year and Date
      20130215-20130215
  • [Presentation] 被災地における民俗行事の復活とその背景を考える2012

    • Author(s)
      政岡 伸洋
    • Organizer
      佛教大学開学100周年記念『ありがとうプロジェクト』歴史学部講演会「民俗文化財の保存と継承をめぐる諸問題」
    • Place of Presentation
      佛教大学
    • Year and Date
      20121123-20121123
    • Invited
  • [Presentation] 震災後の暮らしの再建過程と民俗学の課題―宮城県南三陸沿岸の一村落の事例から―2012

    • Author(s)
      政岡 伸洋
    • Organizer
      日本民俗学会第64回年会
    • Place of Presentation
      東京学芸大学
    • Year and Date
      20121007-20121007
  • [Book] 復興ツーリズム―観光学からのメッセージ(共著、「なぜ民俗行事は復活したのか―その活用に向けて」を担当)2013

    • Author(s)
      総合観光学会
    • Total Pages
      265頁(145-152頁を担当)
    • Publisher
      同文舘出版

URL: 

Published: 2014-07-24  

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