2012 Fiscal Year Research-status Report
東日本大震災以後の在日フィリピン人カトリック共同体のネットワーク化の研究
Project/Area Number |
24520921
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
寺田 勇文 上智大学, 外国語学部, 教授 (20150550)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 東北大震災 / カトリック教会 / 外国人 / フィリピン / ネットワーク |
Research Abstract |
東北被災地はカトリック仙台教区の管轄範囲と合致する。申請者は、震災後の2011年4月から、岩手県、宮城県、福島県のフィリピン人信徒が多い教会(フィリピン人共同体が形成されつつある教会)を訪問していたが、2012年4月以後は、岩手県の大船渡教会、仙台市内の元寺小路教会の2つを中心に、フィリピン人を中心とする教会行事、会合等を観察した。大船渡教会については、フィリピン人が出席するミサおよび信徒宅でのブロックロザリオ(7月)、タガログ語ミサ(9月)、フィリピンから来日した聖歌合唱団コンサート(11月)、タガログ語ミサ(2013年2月)、大震災2周年記念ミサ(2013年3月)、復活祭(同3月)がその主な機会である。 上記以外に宮城県の石巻教会、南三陸の仮設店舗(ミサ)、気仙沼教会、被災地ではないがフィリピン人により創立された山形県新庄教会などの教会を訪問、フィリピン人信徒の会合等を見学しながら、被災地内におけるフィリピン人の相互連絡状況、ネットワーク化の進展について情報を得た。また、2012年6月には第1回仙台教区外国人信徒大会(福島市)、7月には仙台教区年開式カトリック岩手県大会(盛岡市)に出席した。後者には大船渡教会などから多数のフィリピン人が出席しており、仙台教区が震災後、積極的に各地の教会に外国籍の信徒を受入れようとしていることが理解された。12月には被災外国籍等住民支援のための福島円卓会議(福島市)に出席し、フィリピン人以外の外国籍の人々がおかれた状況について比較情報を得た。 初年度における上のような参与観察等により、5~6の複数の教会において、2年度、3年度に関係者のインタビューを実施するための基盤を構築することが可能となった。なお、調査については、2013年1月のフィリピンのアテネオ・デ・マニラ大学における招待講演を始め、国内外で数度にわたり報告をした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度については、できるだけ時間の許す限り、東北被災地各地の教会等をめぐり、フィリピン人をはじめとする外国人カトリック信徒が関係する教会行事、集会等を見学することに努めた。その結果、複数のいくつかの小教区教会に対する訪問回数が増え、関係者、とくにフィリピン人信徒の知遇を得ることができるようになった。 こうした経験をもとに、2年度目から、個々人とのインタビュー、聞き取り調査を行う素地ができたと考える。本研究の目的は、被災地におけるカトリック教会を中心とするフィリピン人のネットワーキング、連携、それを通じて彼らがいかにカトリックであること、フィリピン人であること、さらに在日フィリピン人であることを意識、確認、再定義しつつあるかを明らかにすることであり、そのためには一定の信頼関係を構築した上で行う聞き取り調査が重要である。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の調査を踏まえた上で、2年度、3年度においては、当事者の聞き取り調査を重点的に行う計画である。ここでいう当事者とは、各小教区の教会の信徒であるフィリピン人、その家族、小教区教会の主任司祭、教会委員会の関係者、こどもたちに教理問答を教えるシスターなど幅白い関係者を含む。また、東北被災地に対する復興支援は全日本のカトリック教会が全体として推進していることから、仙台教区関係者以外にも各種のカトリック系の支援団体の関係者にも聞き取り調査を行う。フィリピン人共同体を中心とする参与観察等は従前通り継続する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の大半は被災地に対する調査旅費等に費やされる予定である。また、東北大震災および自然災害と社会復興等に関する文献の収集、購入に努める。
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