2014 Fiscal Year Annual Research Report
災害復興過程の地域的特質と住民意識―オーラル・ヒストリーの実践的活用―
Project/Area Number |
24520923
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
中野 紀和 大東文化大学, 経営学部, 教授 (80320084)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高桑 守 大東文化大学, 国際関係学部, 教授 (60127769) [Withdrawn]
福井 庸子 大東文化大学, 経営学部, 講師 (90409615)
高桑 史子 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 教授 (90289984)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 災害復興 / 語りと記憶 / 地域性 / 生活知 / 比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度にあたり、前年度に引き続き現地調査を実施し、災害(危機的状況)に対する住民の意識変容の過程をオーラル・データ(語り)を軸に考察し、そこにみられる住民の知恵や実践を明らかにした。本研究の目的は、危機的状況におかれた地域が過去や現状をどのように受け止め、何を回復しようとするのか、どのような暮らしを望ましいものとして創造しようとするのか、地元の論理に基づいて掬い上げていくことであった。 玄界島(福岡県)の調査では、収集した語りと、被災以前の生活を知る手がかりとなる住民の日記の内容とを重ねて、早期復興および復興後の生活を支える基盤となった要素を生活全体の中で把握した。同時に、状況を肯定的に捉えようとする語りや他地域の災害被災者への共感も確認できた。三宅島(東京都)では、全島避難時における島民の集落を越えた交流や、帰島後の小中学校の統廃合による子ども同士の新たな交流が感情的紐帯に変化を生じさせていた。それが被災体験の語り方に影響していることが考えられた。東日本大震災の被災地である女川町(宮城県)は復興途上であるが、悲しみと絶望の中から生活再建へ向かおうとする語りや実践が生まれている。また、中越地震の被災地である新潟県の長岡市と小千谷市のイベントや施設も視野に入れ、被災体験伝承のための展示の有効性や語りに表出される記憶による連帯感についても確認した。 さらに比較文化的視点から、異なる社会的・文化的背景を有し、津波による被災を経験したスリランカにおける復興過程も取り上げた。住民の語りを軸に日本の状況と比較することで、出来事の民族誌でも論じられる災害の記憶やその伝承方式の比較文化的研究が可能になった。 年度の後半は、論文等の成果公開に向けて、事前に地域の方による内容の確認、許諾のやりとりをしながら準備を進め、成果の一部を公開することができた。
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Research Products
(5 results)