2014 Fiscal Year Annual Research Report
タイにおける社会運動の相互行為に関する人類学的研究─都市と辺境の動態から
Project/Area Number |
24520925
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
高城 玲 神奈川大学, 経営学部, 准教授 (60414041)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯國 有佳子 大東文化大学, 国際関係学部, 講師 (90462209)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 相互行為 / 社会運動 / 文化人類学 / タイ:ミャンマー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではタイを中心とする地域社会の動態を、社会運動に焦点を当て、国家レベルのマクロな視点のみならず都市部と農村辺境部双方におけるミクロな相互行為の過程という視点からも究明することを目的とし、現地調査と資料収集を行ってきた。 研究代表者は、主にタイのタクシン元首相を対立軸とする政治的な社会運動に焦点を当てた。2014年のクーデター以前は、タクシン派の反独裁民主同盟(UDD)と反タクシン派の民主主義市民連合(PAD)、人民民主改革委員会(PDRC)が中心となった政治的運動に関して、バンコクやチェンマイの都市部やチェンマイ県内などの農村辺境部でも現地調査を重ねた。また、14年クーデター以降は軍部主導政権の統制下に置かれる状況下で、特にチェンマイ県内の政治的な運動に関わってきたコミュニティラジオ局に焦点を当て、その活動や相互行為を重点的に調査した。 そこでは、第1に近年の政治的な運動には1970年代の学生運動世代の影響が色濃く見られること、第2に運動の相互行為の過程で、情緒的な感情や道徳的な価値を前面に出す象徴化の動きが多く見られたこと、第3に敵対する運動主体双方共に、一枚岩ではなく多様な背景と目的・意図を持った人々や組織が運動という意味において集まり、繋がりを生み出す存在であることなどが確認された。特に第2、第3の点に関しては、運動におけるミクロな行為過程への着目が不可欠であり、そうした視点から社会運動の実態を更に民族誌的に描き出す必要性が明らかにされた。 また、研究分担者はタイ周辺との関係における社会運動に関して、国境を越えて拡がるミャンマーからの移民労働者コミュニティ運動や、移民の送り出しに伴うミャンマー側の社会変動を中心にビルマ語での調査を行った。 なお当該年度の研究成果として、研究代表者は論文と国際研究会議での発表を行い、研究分担者は論文と研究会での発表を行った。
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