2015 Fiscal Year Annual Research Report
昭和初期の民俗学・口承文芸研究と隣接諸科学との影響関係についての基礎的研究
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24520927
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Research Institution | Nagoya Keizai University |
Principal Investigator |
高木 史人 名古屋経済大学, 人間科学系, 教授 (70329845)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯倉 義之 國學院大學, 文学部, 准教授 (70546689)
川村 邦光 大阪大学, 文学研究科, 教授 (30214696)
菊地 暁 京都大学, 人文科学研究所, 助教 (80314277)
土居 浩 ものつくり大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (20337687)
真鍋 昌賢 北九州市立大学, 文学部, 教授 (50346152)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 民俗学 / 博物学 / 方言学 / 昭和初期 / 結城次郎 / 採集 / 学問形成 / 連携と排除 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は結城次郎に焦点を当て、昭和初期の民俗学が博物学との関係を分析した。広島県庄原市に住む中村慎吾氏(昭和6年生)『虫と草木と人びとと 第二集』(平成23年自刊)に「ミヤジマトンボの発見者 結城次郎の生涯」が収録されていることを確認した。結城次郎の生没年(1892年~1945年)がほぼ確定され、結城は内燃機関を専門とする教員であり、広島工業学校での後輩である磯貝勇(工学研究者・民俗学者)と共に活動していたこと、朝鮮半島での教員時代には朝鮮博物学会会員であったことなどが分かった。また、結城の『北高来郡昔話集』の語り手である実母の名が「乙玖」であることも分かった。 昆虫研究と昔話研究(民俗学)とがどのように結びついたのかについては、フィールドワークで訪れた中村氏からの聞き書きにより、知見が広がった。中村氏はカミキリムシの研究で学位を取得した民間研究者であるが、昆虫を採集するにはフィールドに住む人からの教示が必要だが、そのときに方言でどう呼ばれているかを知ることが必要だという。昆虫研究の一つに方言呼称の分類もあることを教えられた。ここに、民俗学と博物学(昆虫研究等)とをつなぐ道具立てとして「方言」が大きく見いだされることになった。 柳田國男が方言研究と昔話研究とを同時に進めていたことは分かっていたが、同時に柳田には『野鳥雑記』『野草雑記』等の方言を通した博物学への回路があった。今回、新たに気づかされたのは、柳田の『西は何処』が『昆虫雑記』とでも呼ばれるべき研究であったことだ。 平成28年7月10日の日本昔話学会(於・高千穂大学)で上記について研究発表を行なう。また各研究分担者との共同作業として研究書を平成29年度中に刊行したい。従来、民俗学と自然科学(博物学)との関係は南方熊楠が注目されてきたが、柳田國男及びその周辺にも自然科学との接点があったことが明らかになった。
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Research Products
(16 results)