2014 Fiscal Year Annual Research Report
多文化社会のケア・ジェンダー・エスニシティ:パキスタン系イギリス女性の事例から
Project/Area Number |
24520928
|
Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
工藤 正子 京都女子大学, 現代社会学部, 教授 (80447458)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | ケア / 多文化社会 / ジェンダー / イギリス / パキスタン系移民 / エスニシティ / 高齢者 / 介護 |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年8月に約3週間、バーミンガム市で調査するとともに、ロンドンでも研究者との情報交換および大学図書館での文献調査を行った。バーミンガム市での調査内容は次のとおりである。 ①パキスタン系イギリス女性(主に移民2世)を主な対象に、(1)家内のケア労働をめぐる実践や意識、(2)家外での有償のケア労働の経験、(3)ケア・サービス利用に対する意識等について聞き取りを行った。移民1世が高齢化しつつある現在、親の介護が課題となりつつある女性が多かったため、主に高齢者介護について話を聞いた。このほか、②南アジア系移民の高齢者や介護者(ケアラー)を支援するNGO団体やデイケア施設および居住施設において参与観察を行うとともに、運営者等から活動の現状や課題について聞き取りを行った。この現地調査の期間以外には、文献調査と関連分野の研究者との情報交換を継続しつつ、データの整理、分析を進めた。 以上の調査から次のような成果が得られた。 パキスタン系移民の間では高齢者介護を公的支援に委ねることへの文化的な抵抗が強いものの、ケアの主な担い手である第二世代(とくに女性)の就労や、家族形態の変化等が要因となり、現実のケア実践は変化しつつある。一方で、国家政策は、ケアを施設介護から、在宅およびコミュニティ内での介護へと移行させており、その変化のなかで、誰がいかにケアをするのかがエスニック・コミュニティ内の課題となりつつある。注目すべきは、移民2世を中心とする調査対象者たちが、家族のケアや扶養のあり方を語ることをとおして、主流社会との宗教的、文化的な差異を強調し、「イスラーム教徒」や「南アジア系」としての自己像を補強する傾向が強い点である。最終的な分析においては、ジェンダー、家族、国家政策などが複雑に交差するケア実践の動態を捉えたうえで、ケアを媒介としてエスニック境界がいかに再編されるのかを考察したい。
|