2013 Fiscal Year Research-status Report
職人技術における伝統の保持と近代化に関する研究―「手作り」を視点に―
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24520932
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
小池 淳一 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (60241452)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 隆浩 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (70353373)
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Keywords | 木工業 / ライフヒストリー / 技術観 / 職業観 / 道具 / 民俗信仰 / 宗教史 |
Research Abstract |
東日本における木工業,とりわけ筆記具の製造工程に関する聞き取り調査および参与観察調査を実施した。筆記具を製作するにあたって、軸を素材から切削し、円筒状の形態にまで作り上げる過程、さらにネジ部等を製作し、個々の部品を組み上げる過程について、調査を行った。 また近代化を問題とするために、前近代の職人がおかれていた知的な環境、特に宗教との関連について検討を進めた。前近代の職人が自己の技術や職業観を神仏との関係において持ち伝えてきていることを改めて確認し、宗教史のなかに位置づけた上で、近代化の過程でそれらがどういった変容を遂げていったのか、という問題意識で検討を進めた。特に、今年度は前近代的な職人の意識や技術認識、道具に対する心情を民俗信仰や民衆間の仏教信仰、神祇信仰などと関連させながら理解する必要を感じ、分析を進めた。日本宗教学会でその成果の一端を発表した。こうした前近代における職人気質を構成する諸要素の検討をふまえた上で、近代化の過程のなかでどういった変容や創出、転換が行われたかについて検討している。 併せて調査手法の上で枢要なものとなるライフヒストリーインタビューについて、民俗学のみならず、社会学や人類学等における成果を検討し、職人技術の継承という観点からの適用を模索している。技術のみならず、工房や工場といった作業をおこなう空間に関する意識をどのように説得力のあるかたちで記述し、解析するか模索している。今年度はこうした研究上の方法論的な課題に関する文献の収集と検討をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
職人技術の近代化を考える際に、前近代の様相とそれを支えていた諸条件について情報を整理し、分析する必要を感じ、その作業のための文献収集に時間を費やした。一方で、実際の職人への聞き書き調査や参与観察調査がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
複数、多地域における職人からの聞き取りや作業過程の参与観察を行うこと、さらにその過程を音声・映像等に記録し、客観的なデータとして扱えるようにすることが必要と考えており、この点を推進していきたい。
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Research Products
(1 results)