2012 Fiscal Year Research-status Report
『漢書』『晋書』『隋書』刑法志を基軸とする刑罰制度変遷史の基礎的研究
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24530009
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
石岡 浩 東洋大学, アジア文化研究所, 客員研究員 (60576693)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交換 / 台湾 / 中国 |
Research Abstract |
本研究は、国内および中国・台湾の漢籍収蔵機関から、中国歴代王朝の正史の「刑法志」とその抄本の版本を実見し、刑罰制度に関する記述を収集して、そこに現れた記述の異同に注目し、比較検討を行なうことを主たる方法とするものである。 初年度にあたる平成24年度は、夏期・春期の休暇を利用し、台湾中央研究院および故宮博物院で集中的に『漢書』『晋書』『隋書』の刑法志の調査を進める予定であった。ところがこの年の春、代表者(石岡)が入院して手術を受けるという事態が発生し、消化器系の疾病を患ったことから、退院後に食事療法のリハビリが必要となり、当分、国外に長期間滞在することが不可能となった。このため台湾における調査を延期し、国内の学術機関の収蔵する漢籍を主たる対象として調査を行なうことにしたものの、病後の回復期間にあることから、国内の版本の調査も、結局、次年度・次々年度に集中して行なうことにせざるを得なくなってしまった。そのため、初年度に渡航費・交通費と滞在費の多くを使用すべく申請してあったが、それらは次年度に繰り越しせざるを得なくなった。 本来は漢籍の版本の比較研究を通じて、歴代正史「刑法志」の中から問題点を発見する手法を目指していたが、24年度は上記の理由により、所有する書籍および図書館の所有する文献を対象として、すでに問題点が発見されている「刑法志」上の刑罰制度の矛盾点・疑問点を整理する作業に専念し、資料の収集に努めた。 現在は、一つは唐代「流刑」の先蹤と考えるべきか否かが未解決の問題とされている「徙遷」刑に関する資料を網羅収集し、また一つは、官吏の昇進に関する法制度の問題として、唐代の職事官・散官就任からなる官吏登用法の先蹤を秦漢時代の資料から収集する作業を続けている。これらの問題を整理した上で、あらためて次年度以降に、内外の正史の版本の記述を比較検討する調査を行ないたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請では、初年度に台湾の中央研究院・故宮博物院の調査を集中して行ない、それを宮内庁書陵部に持ち込んで、書陵部の所蔵する漢籍と比較検討する予定であったが、上記「研究実績の概要」に記述した通り、代表者の入院・手術によって、内外の漢籍の調査を次年度以降に延期し、もっぱら既存文献の調査に専念することになった。そのため提出した研究計画の達成度はきわめて低いものになっているが、あとで行なうはずであった既存文献資料の網羅収集の作業については、それなりの成果を挙げている。 ただし今年度の前半(4月~9月)を体力の回復とリハビリに費やしたため、じゅうぶんな作業成果を挙げているとは言いがたい。この遅れを次年度以降に取り返すべく一層の研修が必要とされると感じている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、台湾・中国に所在する漢籍資料と日本国内に所在する漢籍資料を突き合わせて、その記述の異同に注意を払いつつ、中国刑罰史上の問題点の解決をはかることにある。しかし代表者(石岡)の病後の回復・リハビリの状況によっては、海外渡航と長期滞在に支障の生じる恐れが多分にある。この場合は、日本国内に所在する漢籍資料の調査と既存文献の精査を研究の主体に変更し、海外資料の調査を最終年度に集中させざるを得ない状況となる。 その場合は、渡航・滞在費として申請した研究費を、研究報告書の一部として、書陵部43冊本『漢書』の図版作成と出版の費用にまわし、あるいは海外渡航・滞在の分の時間を利用して、網羅収集した既存文献の情報を整理し、一冊の資料集に編纂して研究報告書に附属させることを考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本来は、初年度の夏期・春期の休暇期間中に集中して海外研究機関を訪問する予定であって、初年度・次年度により多額の研究費を支給いただくことになっていたが、上記理由により、最終年度に海外研究機関の調査を集中させるように変更があった。そのため渡航回数が減る分の残余費用が生じることから、この費用を利用して、既存文献から収集した中国法制度上の問題点にかかわる資料を一冊の資料集として纏めて、研究報告書に附属させたいと考えている。そのため、平成25年度中に既存文献からの資料収集・整理を終え、26年度中には資料集を印刷できるようにしたい。そのスケジュールに合わせて研究費を使用する計画である。
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