2014 Fiscal Year Research-status Report
台湾総督府50年の再評価-明治期官僚制の側面から-
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24530012
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
谷口 昭 名城大学, 法学部, 教授 (20025159)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 台湾総督府公文類纂 / 臨時台湾土地調査局 / 総督府旧蹟文書 / 台湾の近代化 / 明治官僚制 |
Outline of Annual Research Achievements |
台湾総督府の関係文書を精査すると、総督府による多岐にわたる施政内容はもとより、業務に従事した官員(職員)たちの実像が浮かび上がってくる。本研究は、彼らが残した記録をもとに、50年に及んだ総督府による台湾統治の功罪を摘出し、一概に「帝国主義下の植民地政府」とはいえない施政の実態について再評価を行う。官員たちの出自や性格と、彼らが外地で業務に臨んだ姿勢や資質に視点を据えることによって、外地を媒介とした日本の近代法の展開と、近世に遡る明治期官僚制の特質が浮き彫りになるからである。一世代前に近代化を経験した日本人による台湾近代化の過程を追体験し、明治日本と台湾という歴史空間を再現し、様々な観点から再評価することを最終的な目的とする。 そのため26年度は、引き続き日本人を主とする総督府官員データベース作成を進め、明治期についてはほぼ作業を終え、大正末年までのデータを取得した。ソースとしたのは「台湾総督府職員録」(中央図書館台湾分館蔵、台湾日日新報社発行)であるが、「明治大正昭和 官員録・職員録」(国立公文書館蔵、マイクロフィルム版)を併用して、現地で作成されたデータとの微妙な差異に興味を覚えているので、最終年度の課題としたい。当然、その末尾近くには離島である澎湖庁に配置された職員録が収められており、その歴史空間を追体験するため、8月末の猛暑のさなかに訪れることができた。北西端の軍事施設の遺構へは文字通り汗だくの強行軍となったが、馬公市には庁舎・警察・郵便局の建物(博物館等として保存されている)が残り、単なる軍事の島という先入観とは別に文民の息吹を実感することになった。 また、引き続き臨時台湾土地調査局公文類纂(南投市新興新村 国史館台湾文献館蔵)の文字データ化を進め、新たに約6万字の翻刻を終えて、その分析が最終段階に達していることも26年度の実績と認知している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究基盤として依拠する文献・文書資料のうち、「臨時台湾土地調査局公文類纂」(国史館台湾文献館所蔵)については、292巻にのぼる冊子のうち殆どの画像データを取得し、必要な文書について新たにほぼ6万字の文字データを蓄積した。当然のことながら、「台湾総督府公文類纂」本体への関連調査が必要であるが、取捨選択と分析の過程であり、現況ではまだ完了していない。この点を顧慮しても、現地に直結する資料調査はおおむね順調だといえる。 また、総督府職員録については、明治期の全職員(約3000名×15年分)の記録を蓄積し、データベース化を終わったが、年度ごとの推移および類型化の作業に着手し、現在最終的な分析途上にある。彼らの出自や職務・職種に加えて現地生活の態様と、内地化が進んだ昭和前半期にいたる経年変化の概観を得たものの、明治官僚制の帰結として稼働した総督府官員制の構造原理は模索中である。従って、多角的な分析は継続中で、論考等の成果発表にはいたっていない。これは主たる史料を国立中央図書館台湾分館所蔵の「総督府旧蹟文書」に求めていたことに起因するが、26年度中には国立中央研究院が構築した「職員録データベース」を駆使する環境が整い、この部分の調査・分析は加速度的に進展している。 全体としては、最終年度における研究成果の公表に向けた史料整備がほぼ完了もしくは完了直前の状態に到達したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
収集整理した各種データを総合し、研究の目的に沿った分析を完成させて成果の公表に向けた推進策を採る。その内容は次の3点である。 その一は、各種「公文類纂」の取得データおよび翻刻文字データを精査し、立論の基盤を構成する。 その二は、「総督府職員録」について、内地版「明治・大正・昭和 官員録・職員録」(国立公文書館所蔵、マイクロフィルム版)との比較照合を完了させ、国立中央研究院の提供するデータベースを駆使して、効率的で豊かな官員像を提示する基盤を構成する。 その三は、台湾大学法律学院王泰升氏が構築・公開した「法院文書」を有効利用し、地方法院に残された判決録から本研究に資する史料を補強する。 その傍ら、これまで等閑視してきた日本国内の史資料を見直し、明治官僚制に関する基本的な理解に遺漏なきを期し、もって台湾総督府50年の再評価に資する論文等の執筆に着手する。そのため、現地にはいまだ実感していない歴史空間が残されているので、1週間程度の現地調査を実施する。これには、後に計画している翻刻史料集公刊に向けた最終に近い原本校訂を兼ねさせる意図を含んでいる。
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Causes of Carryover |
予定した謝金(研究補助員)に端数がでた結果の差額である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
些少なので、使用計画について基本的に変更はない。
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Research Products
(1 results)