2013 Fiscal Year Research-status Report
コモン・ロー思想の展開-わが国の判例法学への示唆-
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24530013
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
戒能 通弘 同志社大学, 法学部, 教授 (40388038)
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Keywords | ベンサム / 功利主義 / コモン・ロー / 法思想史 |
Research Abstract |
平成25年度においては、論文1本、書評1本を公刊した。 論文「英米の法思想とダイバーシティ」、瀬川晃他著『ダイバーシティ時代における法・政治システムの再検証』(成文堂)においては、平成25年に公刊した単著『近代英米法思想の展開-ホッブズ=クック論争からリアリズム法学まで-』(ミネルヴァ書房)で検討した英米の法思想、コモン・ロー思想の研究を基礎としながら、当該論文が収録された共著のテーマである「ダイバーシティ」の観点から、イギリス、アメリカの法思想、コモン・ロー思想の特徴の比較を行った。英米の法思想、コモン・ロー思想の比較については、これまで、サマーズ・アティアの共著、ホーウィッツ、ポズナーなど、英米の著名な法学者、歴史家によっても検討されてきたが、それらの研究の問題点、さらには不十分な点を指摘しつつ、イギリス=法実証主義的、アメリカ=社会応答的という図式によってこそ、両者の比較が可能になるという枠組みの提示を試みた。 書評 「ジョン・フォーテスキュー著、直江眞一訳『自然法論』」(イギリス哲学研究37号)では、15世紀のイギリスの法律家で、イングランドのコモン・ロー思想、特にその政体論、国会主権論に影響を与えたジョン・フォーテスキューの『自然法論』の直江眞一教授の翻訳の書評を行った。フォーテスキューのその著書自体は、王位継承権に関わるものであったが、より広いイギリス法思想、コモン・ロー思想におけるその位置づけについても、若干の考察を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の柱は2つあり、まず1つは、わが国の法形成における判例法の役割の増加に則して、イギリス、そしてアメリカの法伝統において、裁判所、判例法において法形成がどのようになされ、正統化されてきたかを検討することである。論文「英米の法思想とダイバーシティ」においては、ダイバーシティの観点から、イギリスとアメリカのコモン・ロー思想につき、歴史的な観点からの比較を行ったが、その際、イギリスにおいては、歴史的にその権威を認められたコモン・ローの基本的なルールの類推によって判例法が発展してきたのに対し、アメリカにおいては、社会一般、共同体の価値との一致によって判例法、コモン・ローの発展が正統化されてきたことを示している。 また、英米の判例法理論、コモン・ロー思想史のわが国の判例法学への示唆につき検討するという本研究の目的を十全に果たすためには、コモン・ローの思想史を内在的に研究するだけでは不十分で、コモン・ローの伝統に対する最も苛烈な批判者であったベンサムのコモン・ロー批判をも検討し、コモン・ロー思想のマイナス面も十分に検討する必要がある。本年度は、ベンサムとコモン・ローとの関係を探る上で重要であるが、十分な先行研究がなされておらず、新たな知見を得られる可能性がある文献として、ベンサムの『証拠法の原理』を購入し、検討を開始した。また、2014年の3月に、渡英して、ロンドン大学のScience Libraryでベンサムの未発表の文献を閲覧した。なお、その渡英時に、ロンドン大学高等法学研究所でアメリカの歴史法学者、カーターの'The provinces of the written and the unwritten law: An address.' (New York, 1889)という文献を見つけ、複写した。こちらは逆に、コモン・ロー伝統からベンサムへの再反論である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の到達点の1つとして、平成26年に、横浜国立大学で開催される国際功利主義学会の関連セミナーを京都で開催することがある。コモン・ロー思想史、ベンサムの法思想を研究する海外の第一線の研究者を招聘し、日本の研究者、海外からの研究者にも多く参加していただき、議論を深めていただくことを予定している。今のところ、イギリス法制史、法思想史を専攻し、コモン・ロー思想史についても優れた業績を数多く残している、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのマイケル・ロバーン教授、国会制定法とコモン・ローの関係からベンサムの法思想、法典化論を検討した著書を執筆し、最近は、政治思想の観点からもベンサムの法典化論を検討する非常に興味深い研究を進めている、カリフォルニア大学バークレー校のデイビット・リーバーマン教授にご報告いただくことが確定している。この他にも、中国のベンサム研究者にもご報告いただくことが内定している。また、上記国際学会でも報告し、「そもそも法とはどのような特徴があり、あらゆる法が備える必要のある性質とはいかなるものか」という観点からベンサムの法典化論、コモン・ロー思想の双方を比較、検討する。 この他にも、以下は、平成25年度に内定したものだが、国際法哲学社会哲学会日本支部の招聘で来日する、アメリカ・ワシントン大学のブライアン・タマナハ教授のアメリカ法思想史研究につき、法社会学会のミニシンポジウムで、また、立法学をめぐる法思想史につき、法哲学会のワークショップで報告する。日本の研究者からも、引き続き、本研究へのご助言をいただきたい。 なお、横浜国立大学の深貝保則教授との共編著『ジェレミー・ベンサムの挑戦』につき、2014年度科学研究費助成事業研究成果公開促進費(学術図書)の交付内定をいただいた。そちらに収録予定の論文でも、ベンサムとコモン・ロー思想双方を考察する予定である。
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Research Products
(5 results)