2013 Fiscal Year Research-status Report
民法典の「分かりにくさ」をめぐる問題群の比較法史的研究
Project/Area Number |
24530015
|
Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
兒玉 寛 龍谷大学, 法務研究科, 教授 (70192060)
|
Keywords | 裁判拒絶禁止の原則 / 判決遅延禁止の原則 / 裁判官の権限 / 自律的な法学 |
Research Abstract |
20世紀の「民法典の分かりにくさ」の原因は、その条文の抽象性にある。これに対して、1794年のプロイセン一般ラント法は、非常に具体的な多数の条文をおいていた。このような差異が生じた背景として、「裁判拒絶の禁止」の原則が18世紀末以降に有力になったことがある。 2013年度は、この原則がどのような経緯で登場したのか、そして、この原則の登場がどのような影響を立法・行政・司法の三つの権力に与えたのか、を検討した。 従来、この原則に関する研究が欠落した。2007年の第11回ドイツ・クロアチア法律家大会『裁判拒絶禁止の原則と判決遅延禁止の原則』というシンポジウムの報告書が2010年に刊行された。2013年度は、この報告書を、18世紀末から19世紀初頭にかけてのヨーロッパにおける司法制度・法律家資格試験・法学部教育の改革に関する諸研究と関連付けながら分析した。 その結果、第1に、この原則の登場が三権分立論に短絡することができないことが判明した。第2に、この原則の登場が司法権や法学のあり方に関する見解の転換と不可分のものであることを確認した。第3に、この原則のもとでの法学のあり方に関する見解の転換が、1804年のフランス民法典、1811年のオーストリア民法典、1900年のドイツ民法典では異なることを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2013年度は、法科大学院で、前任者の退職の後任補充が認められなかったため、これまで担当した経験のない科目を3つ担当することになった。このため、一からの講義資料の作成に時間を投入せざるをえなかった。 このため、科研費による資料収集は行ったものの、それらを活用する時間がなく、当初の予定よりも、若干遅れることとなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
2014年度は、1年間のサヴァティカルを享受する。このため、これまでの遅れを取り戻すべく、本学の年4回の機関誌(龍谷法学)のうち2号から4号まで3ヶ月ごとに研究ノートを寄稿する予定である。
|