2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24530017
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐々木 雅寿 北海道大学, 大学院法学研究科, 教授 (90215731)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 対話理論 / 対話 / カナダ憲法 / 日本国憲法 |
Research Abstract |
1 カナダ憲法の比較検討(対話のメカニズムと内容):平成24年度は、①カナダ最高裁の法律違憲判決の内容、②違憲判決後の議会の対応の内容、③違憲判決後に制定・改正された法律の違憲審査の内実、④対話のメカニズムと内容を、日本で入手可能なカナダ最高裁の判例、学説および議会議事録を中心に分析する作業を進めた。 2 カナダでの予備調査:平成24年9月10日から9月16日までの間、カナダのバンクーバーへ海外出張して、ブリティッシュ・コロンビア大学法科大学院で比較憲法およびカナダ憲法を担当している松井茂記教授と、カナダ憲法を担当しているヤング准教授から、カナダの対話理論の最新の議論状況について説明を受け、議論を行った。 3 日本国憲法の検討(対話と協働の事例分析):日本における最高裁と政治部門の対話・協働の具体例として、最高裁が法律を違憲と判断した事案を中心に、判例の内容、国会審議の検討を行い、日本においても最高裁と国会や政治部門との対話・協働が行われていることを実証した。最高裁と国会との対話には、最高裁の違憲判決⇒国会の法改正という一回的な対話と、最高裁の違憲判決⇒国会の法改正⇒最高裁の更なる違憲審査⇒国会の更なる法改正といった継続的な対話があることが明らかとなった。また、最高裁の違憲判決⇒地方公共団体の対応という最高裁と地方公共団体との対話も行われていることが明らかとなった。このような対話が実現しているのは、最高裁の違憲判決を尊重し、違憲判決に従った適切な立法措置等をとることが必要であるとの観念が国会や政治部門、地方公共団体に共有されているからである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カナダにおける対話の検討については、まず、日本で入手可能な資料に基づいて、カナダ最高裁の判例、学説および議会議事録を中心に分析する作業を進めている。分析すべき基本的な判例のうち主要なものについての検討がほぼ終了し、おおむね計画どおり進んでいる。 次に、平成24年9月10日から9月16日までの間、カナダのバンクーバーへ海外出張して、ブリティッシュ・コロンビア大学法科大学院の松井教授およびヤング准教授から本研究に関るアドバイスを受けることができた。これにより、カナダに関する今後の研究の方向性がほぼ確定した。これも計画どおりの成果といえる。 日本の対話に関しては、主に、法律を違憲と判断した最高裁判例とその後の法律改正の動きを分析し、日本においても最高裁と国会や政治部門との対話が行われていることを実証的に示すことができた。これも、ほぼ計画どおりの進展である。
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Strategy for Future Research Activity |
1 カナダ憲法の比較検討(対話のメカニズムと内容):平成25年度も引き続きカナダにおける対話のメカニズムと具体的内容の解明を行う。その結果、対話を可能とする憲法の構造、裁判所の判決の書き方、議会の対応の仕方、違憲判決を踏まえた新たな法律の違憲審査の在り方等が具体的に明らかになる予定である。東京に出張して、東京にあるカナダ大使館の図書室や東京大学の図書館を利用して必要な資料を入手する。 2 カナダでの本調査:平成25年9月には、カナダのトロントへ10日程度海外出張して、カナダ憲法の専門家に研究の中間まとめを報告し、研究のレビューとアドバイスを受ける。トロントでは、トロント大学で憲法を教えているK.ローチ教授、ランジル教授、オンタリオ州最上級裁判所の裁判官で以前トロント大学において憲法を教えていたR.シャープ元教授等から、研究者および裁判官の観点から、本研究のレビューとアドバイスを受ける予定である。このレビューにより、カナダ憲法の議論をより正確に理解し、日本法への適切な示唆を得ることが可能となる。 3 日本国憲法の検討(対話と協働の条件):平成25年度は、日本国憲法の下で対話と協働が可能となるための条件について、関連する判例と最新の学説を分析する。今年度も、大阪に出張して、大阪市立大学の米沢教授(憲法学)・渡辺教授(憲法学)と日本国憲法の解釈に関して意見交換する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究費に関しては、63,938円の残額が生じた。 これは、経費の節減・効率的使用によって発生したものである。この残額は、平成25年度の比較的早い段階で、日本国憲法の下での対話に関連する最新の図書等を購入するために使用する。
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