2012 Fiscal Year Research-status Report
行政改革立法の執行プロセスに関する法実証的研究―行政改革と行政法理論の相互変容-
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24530018
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山下 竜一 北海道大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (60239994)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 行政法 / 行政改革 |
Research Abstract |
本研究の初年度にあたる今年度は、①廃棄物事業やエネルギー事業を対象とし、これらの事業に関する改革立法が行政改革の中でどのように位置づけられるかを明らかにすること、②廃棄物事業とエネルギー事業に関する改革立法の執行により各主体の権利利益にいかなる影響が生じているか、また、行政資源にいかなる影響が生じているかを明らかにすることを課題とし、これらの課題を実現するため、③日本や海外の行政改革、廃棄物事業及びエネルギー事業に関する文献の収集・分析、関係機関でのヒアリング、研究報告を通じての意見交換及び研究視角の設定を行うというものであった。そして、今年度、実際に行ったことは以下の通りである。 1、日本の行政改革等の文献を収集し、「効率性」という言葉に着目し、日本の行政法学や行政改革において効率性がいかなる意味・機能を果たしているかを分析した。その結果、効率性が多義的に用いられていることや組織法・内部法で多用される一方、外部法ではあまり使用されていないことが明らかとなった。 2、廃棄物事業やエネルギー事業における民営化の動向を分析する中で、平成24年度から大阪市でごみ収集事業の大規模な民営化政策が開始した。この政策は現在進行中であり今後の動向を見据える必要があるが、現時点では、大阪府市の統合問題や担当職員の非公務員化問題と密接に関連することが明らかとなった。 3、研究視角に関しては、「裁量基準の裁量性と裁量規律性」というテーマで北大公法研究会で報告し、行政改革立法の執行プロセスを分析するためには、命令等の機能分析も必要であり、その際には、裁量性と裁量規律性という二つの機能に着目することが必要であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績で報告したように、今年度における3つの課題(①行政改革立法における廃棄物・エネルギー事業の改革立法の位置付け、②各事業の改革立法による影響の分析、③文献収集、ヒアリング、研究報告)を、ほぼ予定通り、実行した。しかしながら、②各事業の改革立法による影響の分析については、廃棄物事業に関しては、大阪市のごみ収集事業の民営化政策が急遽発表され、現在進行中であり、エネルギー事業に関しては、発送電分離政策につき、政権交代によって政策の修正が行われているため、現時点で成果をまとめることはできず、今後の経過を見定めた上で,成果をまとめるつもりである。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、本研究の二年目にあたる。今年度は、前年度に行った研究の成果と視角の設定を踏まえて、①行政改革立法の執行システム研究を海外調査等を通じてさらに深めること、②行政改革および行政法理論の相互変容という観点から初年度の研究成果と視角設定をさらに理論化すること、③行政改革における再公営化や事前調整・事後保証を中心とする行政法理論を構築するための手がかりを見出すことを課題とする。この課題を実現するために、以下に述べるような調査、資料収集及び中間成果の発表を行う。 1、調査・資料収集 初年度に行った海外、とりわけドイツの行政改革、廃棄物事業・エネルギー事業の改革に関する文献研究を踏まえ、ドイツでの現地調査を行う。とりわけ、①ドイツでは、地域による風力発電、デュアル・システム・ドイチュラントによるごみ収集等,公共サービスにおける行政改革が先行し,その問題点や再公営化の動きも現れているので、先行例となりうる自治体を訪問し、資料収集・ヒアリングを行う。②ドイツで実施されている公共サービス改革と、新制御モデル(NPM)、民間化論、スリムな国家論、保証国家論といった理論とは、相互に影響を与えつつ進行しているので,これらの理論に造詣の深い研究者を訪問し、意見交換する。③初年度に引き続き、廃棄物事業・エネルギー事業の改革を進める国内の自治体を訪問し,資料収集・ヒアリングを行う。 2、中間的構想の報告、発表 1で得られた新たな知見に基づいて,中間的な構想をまとめ、それを京都行政法研究会で報告し、そこで出された意見を取り入れながら、最終的な構想に結びつけていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の調査研究の結果、第一に、申請時には予想されなかった大阪市のごみ事業の民営化政策や政権交代による発送電分離政策の修正といった新たな状況が発生した。これらの政策の分析は本研究にとってきわめて重要であり、しかも、政策は現在進行中であり、今後の経過を見定める必要がある。したがって、どの機関・団体に対して訪問すべきか、少し時間をかけて決定するのがより適切であると思われる。第二に、行政改革立法を対象とする本研究では、具体的素材として廃棄物事業とエネルギー事業をあげていたが、研究の結果、これらの具体的素材以外に、公共施設の指定管理者制度に関する事例から本研究に大きな示唆が得られることが明らかになった。 以上の理由から、今年度予算の一部を次年度に使用することとした。この分、新たに訪れる必要が生じた大阪市における調査経費と新たに調査が必要となった指定管理者制度に関する文献の購入・複写の経費として使用する。以上のような変更を含め次年度は、①日本・海外の廃棄物事業・エネルギー事業に関係する文献等の収集、②日本やドイツの自治体・研究者との意見交換、③成果発表などを行っていく。
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