2013 Fiscal Year Research-status Report
行政改革立法の執行プロセスに関する法実証的研究―行政改革と行政法理論の相互変容-
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24530018
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山下 竜一 北海道大学, 大学院法学研究科, 教授 (60239994)
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Keywords | 行政法 / 行政改革 / 民営化 |
Research Abstract |
本研究の二年目にあたる平成25年度は、前年度に行った研究の成果と視角の設定を踏まえて、①行政改革立法の執行システム研究を海外調査等を通じてさらに深めること、②行政改革と行政法理論の相互変容という観点から初年度の研究成果と視角設定をさらに理論化すること、③行政改革における再公営化や事前調整・事後保証を中心とする行政法理論を構築するための手がかりを見出すことを課題とし、この課題を実現するため、④公共サービスにおける行政改革の弊害と再公営化の動き等に関しドイツで現地調査を行う、新制御モデル・民間化論・スリムな国家論・保証国家論といった理論動向を研究する、廃棄物・エネルギー事業の改革を進めるドイツの自治体を訪問するというものであった。そして、今年度、実際に行ったことは以下のとおりである。 1、行政改革等に関してR. Hendlerトリア大学環境・技術法研究所教授との意見交換やマインツ大学図書館での資料収集を行い、特に電力事業において再公営化の動きが強まっていることが明らかになった。 2、民主主義科学者協会法律部会2013年度学術総会において「持続可能な地域社会と国・自治体の法的責任」というテーマで報告を行い、地域開発が国主導から地域主導に変化しつつあることや地域振興に対する国・自治体の法的責任の議論が十分になされてこなかったことが明らかになった。 3、編者として出版した『自治体争訟・情報公開争訟』において、自治体が関わる紛争が地方分権改革と密接に関連し、第3セクターや指定管理者制度をめぐる特殊な紛争が生じていることがより明らかになった。 4、京都行政法研究会において中間的な成果報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で報告したように、今年度における3つの課題、①行政改革立法の執行システム研究を海外調査等を通じてさらに深めること、②行政改革と行政法理論の相互変容という観点から初年度の研究成果と視角設定をさらに理論化すること、③行政改革における再公営化や事前調整・事後保証を中心とする行政法理論を構築するための手がかりを見出すことを、ほぼ予定通り実行したからである。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度にあたる今年度は、過去2年の研究成果を踏まえ、研究成果の集約と総括にあてる。具体的には、①「再」公営化を目指す新たな行政改革論と②事前調整・事後保証を中心とする新たな行政法理論を構築することを課題とする。この課題を実現するために、以下のように研究を進めていく。 1、「行政改革の新たな展開と法」をテーマとするシンポジウムの開催 本研究の成果の一部は、昨年度、民主主義科学者協会法律部会2013年度学術総会において「持続可能な地域社会と国・自治体の法的責任」というテーマで報告した。同学術総会の全体テーマは、「<持続可能な社会>への転換と法」であり、そこには法律学者だけでなく財政学者、社会学者も参加した。これらの報告は「行政改革の新たな展開」の一つの方向性を示しており、今年度は、昨年度のシンポジウムを発展させるという位置付けで、「行政改革の新たな展開と法」をテーマとする新たなシンポジウムを開催する。 2、研究成果発表 本研究成果の一部であり、昨年度学会報告した「持続可能な地域社会と国・自治体の法的責任」は今年度雑誌掲載される予定である。その他の本研究成果は、京都行政法研究会や北海道大学公法研究会で発表し、そこでの批判や助言を取り入れた上で、最終的な成果全体をまとめ、「北大法学論集」等に発表する。これらの研究成果を文書にまとめ、各種団体に送付し、政策立案の際に参考となるよう努める。
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