2012 Fiscal Year Research-status Report
政官関係と統治の変容に関する比較制度的・憲法学的研究
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24530020
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
只野 雅人 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (90258278)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 政官関係 / 統治 / 憲法学 / 選挙 |
Research Abstract |
1990 年代以降の日本では、「政治主導」による政官関係の再編が志向されてきたが、衆参のねじれという制度的要因もあり、大きな修正を余儀なくされている。他方で、ガバナンス論、公私協働など、「政治主導」とは異なる理論動向や制度改革の動きがあり、日本の政治学や行政法学でも理論化が進められてきた。政官関係をめぐるこうした内外の制度的与件や理論的枠組の変動もふまえ、権力の正統性の論証と政治・行政のダイナミズムの分析の交差点に位置づけられる学問領域である憲法学の視点から、政官関係をめぐる新たな理論構築をめざすことが本研究の目的である。初年度(平成24年度)は、基礎的な文献・資料の収集・調査を中心に、研究基盤の確立と問題の所在の確認を行うことを予定していた。具体的な成果は以下の通りである。 ①予定通り、フランス語文献を中心に、内外の資料の収集を行うことができた。そのため、物品費の多くを書籍等の購入に費やしている。フランス憲法を専攻する大学院生をアルバイトとして雇用することで、効率的な資料の収集・整理に努めた。 ②国会関係の実務家の他、メディア関係者とも、近時の国会や政治のあり方について意見交換を行うことができた。また、日本選挙学会を中心に、政治学研究者と意見交換を行うことができた。また、2012年9月15日~17日、京都大学で開催された日仏共同セミナーに参加し、報告を行った。またセミナーの前後を含め、フランスの憲法研究者と意見交換を行うことができた。 ③平成24年度の主な研究成果としては、「危機と国民主権-基盤のゆらぎと選挙」奥平康弘=樋口陽一編『危機の憲法学』(弘文堂、2013年2月)がある。また、平成25年度前半には、平成24年度に準備を進めてきた、研究を支える方法論に関わるフランスの近時の学術論文の翻訳書を、共編者として出版する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度(平成24年度)は、基礎的な文献・資料の収集・調査を中心に、研究基盤の確立と問題の所在の確認を行うことを予定していた。具体的な成果は、実績の概要に記載したとおりである。 第1の目的であった基盤的な資料の収集については、十分な成果を上げることができた。最新のフランス語の専門書を初め、研究遂行に不可欠な内外の資料を多数収集した。 当初の研究計画において重視していた、実務家や他分野の研究者、さらには海外の研究者との交流も、これまでの研究で培った関係をもとに、順調に進んでいる。とくに、日仏公法セミナーは、国内開催ではあったが、多くのフランス人研究者が参加しており、国際的な学術交流の機会として、大変有益であった。 公刊した主要な研究論文は1点であるが、同論文が掲載された『危機の憲法学』は、新聞の書評でも紹介されるなど、学会以外でも注目を集めている。また、方法論に関わる翻訳プロジェクトの準備を進め、近日中に刊行の予定となっている。 その他、平成24年度前半の研究をふまえ、平成24年度後半には集中的に複数の論文の執筆を行った。いずれもが平成25年度前半には刊行される予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、①申請テーマに関連する文献・資料の調査と収集(海外を含む)、②国会等関係機関の実務家との意見交換、③憲法学以外の関連領域を含む研究者との意見交換、④憲法学以外の関連領域を含む学会・研究会・シンポジウムへの参加(海外を含む)、という手法を組み合わせ、研究を遂行する。文献の収集・調査は必ずしも図書・論文に限らず、聞き取り等も含む。また全体を通じ、これまでの研究の過程で得てきた国内外の人的ネットワークを活用する。 平成25年度においては、引き続き文献・資料の収集を継続するとともに、論点・主題の析出にとりかかり、可能な部分から、論文執筆にも着手してゆく。とくに、方法論的な視座の整序について、フランスにおける「政治法」という視点を意識しつつ、方向性を探る。また、2012年12月の衆議院選挙、さらには2013年7月に予定される参議院選挙ふまえつつ、政治・行政をめぐる制度改革の動向や構造の変化について、憲法学の視点から分析を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予算をある程度上回る額の資料の発注を海外に行ったが、一部の資料が到着しなかったため、5000円強の残額を生じた。額はわずかであり、また2013年3月中には未着資料の一部が届いているので、年度をまたぐことにはなったが、すでに予算執行を終えている。
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Research Products
(2 results)