2013 Fiscal Year Research-status Report
抗告訴訟の性質及び訴訟物の再検討-確認訴訟説に立脚した統一的把握の試み
Project/Area Number |
24530021
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
石崎 誠也 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (20159718)
|
Keywords | 行政訴訟 / 抗告訴訟 / 取消訴訟 / 義務付け訴訟 / 差止め訴訟 / 訴訟物 / 既判力 / ドイツ行政法学 |
Research Abstract |
平成24年度の主たる研究は、行政訴訟(特に義務付け訴訟及び差止め訴訟)の訴訟物及び既判力に関するドイツにおける最近の議論状況に関するものである。平成23年度は取消訴訟に関する日独の学説状況を主に研究対象としたが、それを前提に、義務付け訴訟及び差止め訴訟の訴訟物及び既判力を研究の対象とした。その際、ドイツ行政法学説だけに限定するのではなく、ドイツ行政訴訟実務家がこれら(義務付け訴訟の訴訟物及び既判力)に関する議論につき、どのような意見を有しているのかも調査することとした。 そのため、文献研究の他、平成25年2月にドイツを訪問し、Ehlers教授(ミュンスター大学)、Wolff教授(フランクフルト オーデル大学、現在はバイロイト大学)、Ziekow教授(シュパイヤー行政大学)、Laubinger教授(元マインツ大学)及びラインラント・ファルツ州行政裁判所裁判官2名(コプレンツ及びマインツ)のインタビューを行った。 これらを踏まえて、①義務付け訴訟の訴訟物は給付請求権であると考えられているが、ドイツ義務付け訴訟は全て行政庁に対する処分の申請(第三者に対する介入請求を含め)とその拒否行為を前提としているので、そのような構成が一般に可能であるが、我が国は申請型義務付け訴訟と非申請型義務付け訴訟を分けており、ドイツの議論がそのまま妥当することとはいえないこと、②差止め訴訟は行政裁判所法に明確な根拠規定がなく、一般給付訴訟の一類型として位置づけられているため、給付請求権を観念することが不可欠であるが、我が国は行政事件訴訟法に訴訟要件が定められており、それに則した議論が可能であること、これらが重要であると考えた。また、③差止め訴訟請求棄却の規範力がその後の行政行為取消訴訟に対する遮断効を有するかという問題につき、ドイツにおいては、それを否定する見解が一般的であることがあきらかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ドイツ行政訴訟法理論については、文献研究及び現地の行政法研究者及び行政裁判所裁判官への聞き取り調査によって概ね順調に進んでいる。 しかしながら我が国における行政訴訟訴訟物論の基礎をなす民事訴訟の訴訟物理論についての文献研究が当初の予定より遅れている。研究者(本研究は申請者の単独研究)の学内管理運営業務(法科大学院研究科長職)のため、十分な研究時間が取れなかったことがその理由の一つであるが、科長職を終えたので、今年度において研究の遅れを取り戻すことができると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
第一に、この二年間の文献及び判例研究の成果を踏まえて、抗告訴訟の訴訟物理論に関する研究のまとめを行う。特に前半期に、民事訴訟理論における訴訟物及び既判力理論の到達点を確認し、それと行政訴訟における訴訟物理論との対比を行う。基本的観点は、権利関係訴訟としての民事訴訟と直接攻撃型訴訟としての抗告訴訟との違いを踏まえることである。 第二に、ドイツ行政訴訟法における訴訟物理論及び既判力理論の現状を総括し、我が国との対比を行う。基本的視点は、本案要件として権利侵害性を求めるドイツ行政裁判所法とかかる規定を欠く我が国行政事件訴訟法との違いを踏まえることである。 これらを踏まえて、本研究のまとめを行い、仮説(抗告訴訟の訴訟物を処分要件の存否とすること)の検証を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度2月から3月にかけて、ドイツへの出張を行ったが、当該旅費の支払いが3月31日中に行われず、4月となったことが主な理由である。 また、3月末に民科法律部会合宿研究会行政法分科会で、これまでの研究成果についての報告及び質疑を行ったが、その旅費等が執行されていないためである。 これらの旅費が支払われると、次年度使用額は約14万円となる。 平成25年度より平成26年度使用となった研究費については、文献購入を予定している。 平成26年度交付文分については、当初の計画通り使用する予定である。
|