2013 Fiscal Year Research-status Report
行政争訟制度が有する行政統制機能に関する実証的研究
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24530024
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
深澤 龍一郎 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (50362546)
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Keywords | 行政争訟 / 行政法 / 公法 |
Research Abstract |
昨年度に引き続いて本年度も、行政争訟制度が有する行政統制機能に関する実証的研究についての諸外国の文献を収集し、その研究方法および研究結果を分析したが、本年度は、特にイギリスにおけるテスト・ケースおよびその事例研究の手法に注目した。具体例として、例えば、イギリスのPublic Law Projectの報告書5 Year Review & Impact Report 2006-2011では、少数民族の女性に特に家庭内暴力に関して特別な援助を行う民間団体が地方公共団体から補助金を打ち切られた事案において訴訟が提起され、裁判所が人種間の平等義務に関する主要原理を詳細に示し、後にこの判決が同様の決定を争う多くの団体によって依拠されていることや、2008年4月からオンブズマン(ombudsman)が「非違(maladministration)」に関する根拠に加えて、「サービスの不履行(failure to provide a service)」および「サービスの瑕疵(failure in a service)」に関する不服についても検討するよう要求されることになったが、こうした不服審査の根拠の拡大がオンブズマンの任務に実質的な違いを生じさせるのかどうかが訴訟において争われており、この事件がその他の不服申立人に広範にわたる影響をもたらすことが予測されること等が報告されている。 また、本年度中に、イギリスの行政裁量論に関して念願の単著を刊行することができたが、その第7章「イギリスの公的扶助領域における行政審判所の展開」でも、福祉権運動(Welfare Rights Movement)が、テスト・ケースを通じて、受給者にとって有利な法解釈を裁判所から引き出し、審判所の決定を統一しようとした実態を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、行政争訟制度が現実に果たしている行政統制機能を実証的に分析し、行政争訟制度が行政活動に対して及ぼすインパクトを解明しようとするものである。この目的を達成するためには、まずは、こうした研究が進展している諸外国の先行業績を収集して分析する必要があるが、昨年度に引き続いて本年度も先行業績の収集および分析をおおむね順調に進めることができたと評価することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度が本研究の最終年度に当たるため、引き続き行政争訟制度が有する行政統制機能に関する実証的研究についての諸外国の先行業績を収集して分析するとともに、これと並行して、イギリスおよびオーストラリアの研究者に聞き取り調査を実施し、これまでの疑問点を解消するとともに、わが国において行政争訟制度が有する行政統制機能に関する実証的研究を遂行するうえでの助言を求めることにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初は年度末にイギリスないしオーストラリアに渡航し、聞き取り調査を実施する予定であったが、平成26年度4月1日付で京都大学から九州大学に異動することになり、その準備のため、渡航を翌年度に延期せざるをえなくなったためである。 平成26年度のできるだけ早い段階で、聞き取り調査を実施することにしたい。
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