2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24530026
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松本 和彦 大阪大学, 高等司法研究科, 教授 (40273560)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 環境リスク / 正当化理論 / 予防原則 / 基本権 / 憲法 / 環境法 / ドイツ法 / ヨーロッパ法 |
Research Abstract |
環境リスク規制の法構造と正当化可能性を探究する本研究において、本年度は、基礎的文献の収集及びその分析、関係者へのインタヴュー及び共同討議に重点を置いて研究を進めた。これまで従事してきた環境国家論研究の延長線上で、特に、ドイツ公法学との比較研究との関連を意識して、環境リスク規制の諸問題と取り組んだ。 10月初旬にベルリン自由大学法学部の公法系研究者たちと日独公法シンポジウムを開催し、そこにおいて「環境法における情報取扱いと知識の創出」と題する研究報告を行った。この研究報告は、遺伝子技術法を参照領域とし、遺伝子組み換えがもたらす環境リスクの法的統制の条件を探る過程において、遺伝子技術法としてのカルタヘナ法の知識創出の法的仕組みを考察し、その意義と可能性を検討するものであった。当該報告はドイツ語で行い、ドイツ語の原稿を記録集に収めた。今後、このドイツ語原稿を日本語化し、書籍の形で公表する予定である。 ベルリン自由大学では、憲法・環境法の研究者であるフィリップ・クーニッヒ教授とクリスティアン・カリース教授の2人とコンタクトを取り、環境リスク規制の諸問題について意見交換をすると同時に、上記研究報告について、シンポジウム等の場で、有益なコメントをもらった。彼らから得た示唆についても、研究報告を日本語化する際に、活かす予定でいる。 ドイツ人研究者のみならず、環境法政策学会等の場で、環境リスク規制のあり方について、日本人研究者とも意見交換を試み、自己の研究にフィードバックするよう努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、遺伝子技術法を参照領域に据えて、遺伝子組み換えがもたらす環境リスクの法的統制の条件を探ることを研究の目安にしていた。ベルリン自由大学法学部で日独公法シンポジウムが開催され、そこで研究報告の機会が与えられたのをきっかけに、遺伝子技術法としてのカルタヘナ法の知識創出の法的仕組みを考察し、その意義と可能性を検討することになった。夏に同僚たちの前で日本語で「環境法における情報取扱いと知識の創出」と題する研究報告を行い、その報告を基に、秋にベルリン自由大学で"Der Umgang mit Informationen und die Wissensgenerierung im Umweltrecht" と題する研究報告をドイツ語で行った。環境リスク規制の法構造を探求するに際して、遺伝子技術法から検討を始める予定でいたため、夏と秋の研究報告は、ちょうどよい研究の区切りになった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は、次の2つの方向において進めるつもりでいる。第1の研究方向は、昨年度にドイツ・ベルリンにおいてドイツ語で研究報告を行った「環境法における情報取扱いと知識の創出」を日本語化し、書籍の形にして日本で発表するとともに、「知識の創出」の部分について、研究を深め、今年の秋に開催される日本公法学会において、その研究を活かした報告を行うことである。 第2の研究方向は、遺伝子技術法の具体的検討をさらに発展させて、環境リスク規制の正当化理論への架橋を図ることである。この方向性については、ドイツの正当化理論(Legitimationstheorie)を積極的に摂取することによって、漸次、追求していきたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ドイツを中心とするEU諸国の憲法・環境法理論を参照するため、EU諸国の研究者との積極的な意見交換を進める予定でいる。特にベルリン自由大学のフィリップ・クーニッヒ教授、及びベルリン・フンボルト大学のクリストホフ・メラース教授及びクリスティアン・ヴァルトホッフ教授とは、これまで通り、積極的に交流を図る。そのため、ドイツ及びEU諸国への渡航に必要な費用の支出を考えている。 また、環境リスク規制に関するドイツ及びEU諸国の基本文献も、大阪大学図書館を通じて入手する。ここ数年間使い続けて古くなったパソコンも、今年は買い換える予定でいる。
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