2013 Fiscal Year Research-status Report
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24530026
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松本 和彦 大阪大学, 高等司法研究科, 教授 (40273560)
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Keywords | 環境リスク / 正当化理論 / 予防原則 / 基本権 / 憲法 / 環境法 / ドイツ法 / ヨーロッパ法 |
Research Abstract |
一昨年にドイツ・ベルリンでの日独公法学シンポジウムにおいてドイツ語で研究報告した「環境法における情報取扱いと知識の創出」を日本語化し、さらに内容を拡充して、自らが編集した『日独公法学の挑戦』に収録した上で、当該書籍を公刊した。同論文は、遺伝子組み換えがもたらす環境リスクの法的統制のため、その前提をなす知識創出のための法的仕組みを検討したものである。遺伝子技術法を参照領域として、環境リスク規制の法構造と正当化可能性を探る本研究の成果である。 本年度はさらに、環境リスク論の研究を原子力発電所のリスク問題とリンクさせて検討することも試みた。その成果は、日本公法学会において研究報告した「統治と専門性-憲法の場合」や早稲田大学で開催されたシンポジウム「リスク論と原子力発電」におけるコメントの形で公表した。特に本年度は、環境リスク論における専門知の組織法的・手続法的統制の問題に力点を置いて研究をした。また、原発事故との関連で、従来から研究を続けている人権論を展開した「原発事故と憲法上の権利」という論文も公表している。 比較法の対象として、従来から取り組んでいるドイツ憲法及び環境法の動向を探るために、ドイツ・ベルリン自由大学の研究者たちと頻繁に連絡を取り合い、意見交換を行った。ドイツ法を足がかりに、近年のドイツ法の背景をなすEU法の知識の摂取にも努め、ベルギー・ブリュッセルの関係機関との意見交換を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
一昨年度、ドイツ・ベルリン自由大学法学部において開催された日独公法学シンポジウムにおいて研究報告した"Der Umgang mit Informationen und die Wissensgenerierung im Umweltrecht"の内容を拡充し、日本語化して、『日独公法学の挑戦』と題する書籍を編集し、そこに収めて公刊した。遺伝子技術法を参照領域に据えて、そこで見出される環境リスクの法的統制の条件を探るという研究は、これによっておおむね順調に進展しているといえた。昨年度はさらに、原発リスクの組織法的・手続法的統制の問題も射程に入れ、それに関連する研究を従来からの研究に接続させることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
環境リスクの法的統制の研究を進めるため、本年度は、昨年度に着手した原発リスクの問題をさらに検討し、それをまとめ上げることを目指す。特に、昨年秋に日本公法学会において研究報告した「統治と専門性」のテーマを論文の形にまとめ、公表したい。さらに、原発リスクの問題や遺伝子組み換えリスクの問題を素材に、ドイツの正当化理論(Legitimationstheorie)を応用発展させて、「環境リスクの法構造と正当化可能性」という研究テーマにふさわしい枠組みの構築に努めたい。
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